下記に述べる勧告は、次の20カ国が参加して開催されたOECDトンネル諮問会議において採択されたものである。
| オーストラリア | ドイツ | ポルトガル | オーストリア |
| ギリシャ | スペイン | ベルギー | アイスランド |
| スウェーデン | カナダ | イタリア | スイス |
| デンマーク | 日 本 | イギリス | フィンランド |
| オランダ | アメリカ合衆国 | フランス | ノルウェー |
トンネルに対する世界の需要はすでに相当の量にのぼっているが今後ますます増加するものと予想される。本会議のために行われた調査によれば、1960~1969 年の間にOECD加盟国内では少なくとも13,000㎞(採鉱を含めば 430,000㎞)のトンネルが施工された。その掘削量は3億m3(採鉱を含めば40億m3 )におよぶものである。この会議の開催当時、これらの国々における年間トンネル工事費は10億ドル(採鉱を含めば30億ドル)と見積られていた。 1970~1979年の10年間にはトンネルに対する需要は過去10年間の需要に比べ少なくとも2倍になるものと予想される。ますます増加するかかる需要量は、鉱物採取、公益施設、運輸施設、水力開発その他従来の用途範囲での地下掘削需要の増加のみならず、都市地域における新しい特殊な必要性からも生ずるものである。都市人口がたえず膨張し、集中するにつれて、従来地上に設けられていた多くの主要機能や施設(たとえば自動車道路、発電所、駐車場、貯水池、下水施設等)を地下に収容し、地表面を保存し、環境の保全をはかることがますます必要になってくる。都市の膨張が続くかぎり、地下利用に対するこの種の需要は都市開発を計画し、遂行する関係者に困難な問題を投げかけつつ、急速なペースで増大するであろう。かかる問題に効果的に対処するには如何なる施策をとるべきかを各国政府に勧告するのがOECDトンネル諮問会議の本質的な目的である。この意味において、本会議は従来のトンネルに関する国際会議と異なっている。この点については過去の如何なる技術的会議とも興を異にしている。今日の技術会議の大部分はある定まった分野における学問水準を検討し、情報、見解、および経験を交換するための場として役立つことを目的としている。本会議はトンネル掘削という特定の技術に対する社会的意義と、この技術を環境改善のために建設的に利用することに焦点を合わせて討議するように意図されている。したがって本会議はトンネルの潜在的需要を評価し、今後かかる潜在需要を助長するためにとるべき積極的公共施策につき指標を与えるものである。
過去10 年ほどの間にある特定のトンネル技術ではかなりの進歩が見られた。なかでも最大限の努力が結集されたときは、工費、工期とも50%またはそれ以上節減された例もある特定のトンネルでは見られる。しかしこの会議のために行われた調査に参加した各国の間では、トンネル技術は更に根本的な改良が必要であり、また可能であり達成しうるという点で意見の一致を見られる。単に工費や工期の大幅な節減のみでなく、特に都市地域におけるトンネル工事がおよぼす好ましからざる影響、すなわち騒音、ほこり、振動、地盤沈下等もまた最小限に抑止することができる。トンネル技術の改良を促進し、またある面ではかかる改良の促進を頑固に拒む種々の障害を除去するためにも各国政府の適切な措置が期待され或いは必要不可欠なものと思われる。しかしこれは進歩が短期間に容易になされるということを意味するものではない。現存する問題を解決する万能薬は存在しないのである。地盤状態の変化というきわめて重大な要素、個々のトンネル掘削延長と直接関係するもの以外に、トンネル掘削に含まれる各種作業、工事条件の多様性、工事規模と最適施工計画の関連性-これらすべての要因が進歩を複雑化し、かつ普遍的に適用できる単純な解決法を阻んでいる。
更に種々の制度上の要因によりトンネル技術の急速な改良が妨げられている。たとえば、トンネル掘削は異なった目的のためには異なった技術を要すると見なす傾向が技術の進歩を妨げていた。今日までトンネル掘削工法の相違性ということにあまり重点が置かれ、その本質的類似性ということに注意がほとんど払われなかった。次にトンネル掘削は統一されたシステムとして考えられず各種技術の混合されたものと考えられる傾向が多い。研究調査がトンネル掘削工種の種々の要素について、片寄ってなされているため、ある重要部門にほとんど注意が向けられていない。最後に、トンネル工事のマーケットは非常に断続的かつ予測不可能なるために新技術の急速なる普及には適していないといえる。最近の最も著しい革新はおおむね長期にわたって特定の目的のためにトンネル技術の促進が継続して行われてきた分野に見られる。
上述の要因-トンネル掘削技術の本質的な困難性、制度上の障害、地下施設の利点に対する認識不足-これらすべてが土木工学の他の部門に比しトンネル掘削技術の発達をおくらせる原因となっている。公共の福祉のためにトンネル技術を最も有効に利用することにより目的が達成される。したがってこれを阻む種々の障害を明確にし、可能な限りこれを排除せねばならない。
かかる背景から、本会議においては次の各項目につき各国政府の配慮と適切なる措置を勧告する。
これら5つの勧告は以下に詳述する。
これに続きトンネル掘削につき最も技術的に要求度の高い要改良点の概要を-優劣順序を付けずに-下記の項目につき列挙する。
当会議で用いられている“トンネル”とは、最終的には地表面下に位置し使用され、何等かの方法で所定の形状寸法に作られた空洞で、断面積が2㎡以上のものを指す。
たとえば、現場進入に伴う障害、将来の土地利用に対する障害、工事中の不便とビジネスタイムの損失等を含む地上工事による社会的代価、土地の永久占有による不動産評価または税収の減少、あるいは特別の施設を地下に設置することにより騒音、振動、臭気、視界制限を永久に緩和する等、環境改善効果を考えるならば、地下施設のほうが往々にして有利となる。
今回の調査に対する各国の回答を詳細に検討してみると、研究成果をトンネルの設計と施工上の問題に適用することは非常に難しいことを示唆している。利用しうる最高の技術を実際工事に十分活用していない点に問題がある。
研究から始まり、開発、試験、評価、修正、再評価と続く一連の開発過程の繋がりに弱点や誤解さえあることが明らかになった。かかる開発成果は一般に普及され、適当な状況の下で広く認識利用されなければならない。ある程度これは特にトンネル掘削の際に遭遇する各種の条件変化と従って問題の多様性によるものである。更に一般的にトンネルの研究設計、施工において共通の目的に欠くるところがあるため、多くの場合その目的に最適な解決に達することができなかったり、ある問題を他の問題と別個に考える傾向となっている。
OECDのトンネル需要報告書によれば鉱山分野を除けば、トンネル工事は、公共事業企業としてもしくは公共使用のためにたとえば上下水道、交通網などのように公共資金で大部分施工されていることが注目される。したがってトンネル技術の研究開発に対する公共投資は結果的には公共事業企業者の費用の削減になることは明らかである。
以下に優先的に研究を必要とする主要な項目を簡単に列挙する。
1.地質および水理
1.1 地表および切羽より行う物理探査法の開発
1.2 ボーリング孔を利用して、物理探査により更に正確な地質情報をうる技術の開発
1.3 連続サンプリング採取を含む、不攪乱資料採取法
1.4 岩石および土砂の標準表現法および工学的分類法
1.5 地下水状況および各方向の透水度調査法および掘削中の湧水、水位低下および復元の予測法
1.6 埋設物、空洞および水中障害物の探知法
1.7 沈埋トンネル施工中の波浪、潮流の影響
1.8 沈埋トンネルにおける荷重伝達状態および沈泥速度および範囲の調査法
2.岩盤および土質力学
2.1 岩盤力学および土質工学の基礎研究
2.2 土砂および岩石の現場における性質の正確かつ経済的調査法
2.3 トンネル構造に対する地盤の時間的経過挙動の研究
2.4 局限された範囲内の土砂の転圧方法の改良
2.5 地震時における各種土質のトンネルに対する影響の研究
2.6 沈埋トンネルの水中トレンチの安定研究
3.掘削方法
3.1 岩石破砕の基本的研究
3.2 機械掘削において硬岩にも適用しうるカッター、ベアリングの改良
3.3 地質の変化や湧水のある場合にでも適用しうる機械および掘削法の開発
3.4 火薬を使用してかつ機械掘削する方法をも含み、新しい掘削法の研究
3.5 周辺地山、近接建造物に対する影響の少ない掘削法および掘削機の開発
3.6 機械掘削を積極的に採用しうるように、トンネル断面の標準化
3.7 機械掘削の簡単かつ正確な操舵法
3.8 掘削法と岩盤力学、土質工学の関係の究明
3.9 圧縮空気を使用しない滞水層内のトンネル切羽の保持法
3.10 岩石および土砂の破砕、掘削につき新技術の利用可能性を積極的に研究する
3.11 沈埋トンネルのトレンチ掘削の改良
3.12 沈埋トンネルのトレンチ計測方法の改良
4.材料運搬
4.1 流動性能、粒子の大小の影響等に関し、土砂粒の性質の基礎的研究
4.2 小型の運搬方式の開発
4.3 市街地に適する運搬方法の開発
4.4 ずりの流体運送、空気輸送方式の研究
4.5 ずりの掘削、積込、輸送およびずり捨の総合システムの開発
4.6 水深の深い沈埋トンネルにおける砂吹込み基礎の補助方式の開発
5.支保工および覆工
5.1 土留および水中法面安定計算の改善
5.2 支保工の合理的設計法、特に吹付支保工、ロックボルト、タイバックアンカー、連続壁、柱列壁の設計
5.3 地山(開削トンネルの埋戻しを含む)と支保工、覆工およびそれらの相互関係につき、現場における挙動に関するデーターの収集を計り、各種トンネルの設計法への応用をはかる。
5.4 切羽に接し急速に建込みうる支保工で永久覆工と一体となって働く支保工の開発
5.5 取扱いおよび建込の容易な支保工の開発
5.6 グラウトおよび凍結による地盤強化技術および材料の開発
5.7 開削工法において、近隣地盤の沈下を最小限に止める支保工の開発
5.8 プレキャスト覆工、特に地山を再圧縮する覆工技術の開発
5.9 地山を損傷しない平滑爆破法(特に地下構造物について)の開発
5.10 開削構造の土留壁の改良
・爆音振動の少ない、狭隘な場所で使用できるくい打機
・精度が高く、広い作業面積を要しない、水密性の高い柱列壁
・玉石、岩石等支障物のある土質でも使用できるベントナイト置換連続壁
・経済的で基礎反力伝達性能の良いIビーム土留壁
5.11 経済的でジョイントの容易なプレキャスト沈埋エレメントの開発
5.12 潜水夫を使用せずにくい基礎と沈埋エレメントを接続する方法
5.13 地下水低下影響の予測法の改良
6.環境管理および安全
6.1 爆音、じんあい、ガスの集中度測定法の改良
6.2 地下作業、特に新方式掘削法につき環境基準の開発
6.3 作業員の危険防止上、掘削機械のリモートコントロール操作方式の開発
6.4 じんあい、電気機械危害、煙、高温、爆音、振動、湧水の制御方式の改良開発
6.5 圧縮空気内作業員の潜函病軽減法
7.トンネル掘削システム
7.1 トンネル作業の行程を表現し、不適当な点を分析するために、数学的手法およびモデル手法の開発
7.2 数学的モデルで表現できるような地質条件の表示方法の開発、研究
7.3 労働災害および工費を低減するために、自動化による利益の研究
Links:
[1] http://www.japan-tunnel.org/setsulitsu_shuisho
[2] http://www.japan-tunnel.org/contract