202003
目次:掲載頁/演題/発表者/所属
膨張性地山における計測システムと活用事例 -北海道新幹線立岩トンネル(立岩)-
発表者:戸田建設㈱ 札幌支店北海道新幹線立岩トンネル(立岩)作業所工事係 横道 立樹
(概要)立岩トンネルは北海道新幹線において,新八雲(仮称)駅から長万部駅間の八雲方に位置する全長 17km の山岳トンネルである.本工事は,新函館北斗方坑口より 5km を施工するものである.当該工区の地質は,新第三紀中新世の海成層である訓縫層が広範に分布しており,玄武岩質火砕岩,緑色凝灰岩および頁岩,砂岩,礫岩などの堆積岩で構成される.当工事の地山特性として,工区の大半を占める玄武岩は熱水変質を受けているため,スメクタイトの含有量が中量から多量で膨張性を示す.また,一軸圧縮強度が平均 30N/mm2 程度であり,土被りが約200m であることから,地山強度比は 0.5~7.0 程度と小さい.本報では,この膨張性地山に対する計測システムと,これらのシステムを活用した対策事例について報告する.
(キーワード)スメクタイト,地山強度比,膨張性地山,計測システム
鉄道に近接する急傾斜斜面を有する坑口部の施工 -国道 106 号 与部沢(よべさわ)トンネル工事-
発表者:五洋建設㈱ 東北支店与部沢トンネル工事事務所工事主任 油谷 晃佑
(概要)与部沢トンネルは,宮古横断道路である国道 106 号のうち平津戸・岩井~松草間の 7km 区間に計画された延長 1,039mの 2 車線トンネルである.掘削到達点である起点側坑口周辺は,不安定な岩塊が露頭する急傾斜斜面であるとともに,坑口直下には JR 山田線があった.このため坑口部の施工にたっては,トンネル掘削に伴う発破振動やゆるみによって岩塊が落石することや,斜面そのものが崩壊して JR 山田線の営業に支障を与える懸念があった.そこで当該坑口部の施工に当たっては,長尺鋼管フォアパイリング工法を採用して岩盤を補強するとともに,発破振動,地表面変位および事前に施工されたグラウンドアンカーの軸力を計測して斜面の安定性を随時評価することとした.その際,計測データについては,自社開発の BIM/CIM「i-PentaCOL」を用いることで,リアルタイムに挙動を把握し,工事関係者とも共有した.その結果,斜面崩壊に至るような大きな変位や落石はなく,JR 山田線の営業に支障を与えることなく貫通することができた.
(キーワード )近接施工,急傾斜斜面,長尺鋼管フォアパイリング,発破振動,BIM/CIM
堰堤直下および河川直下小土被り部のトンネル掘削 -九州新幹線(西九州) 久山トンネル(西)他工事-
発表者:西松建設㈱ 九州支社新幹線久山西出張所主任 松嵜 千彩希
(概要)九州新幹線(西九州)久山トンネル(西)他工事は,九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の新設工事のうち,久山トンネルの武雄温泉起点 50km955m~53km395m(延長 2,440m)間のトンネルなどの工事である.このうち,51km003m~51km066m 区間は,最小土かぶり 10m で地表面には久山川の堰堤がある.また 52km940m~53km090m 区間は,最小土かぶり3m で,地表面には都通川(トンネル掘削前に改修)がある.どちらの区間も小土かぶりであり,かつ直上には構造物が存在する.よって,トンネル掘削によって構造物への影響が懸念された.この掘削時のリスクを回避するため,事前に数値解析などの検討を行い,支保パターンの変更や補助工法の追加をすることとした.
(キーワード) 小土かぶり,3次元数値解析,2次元数値解析,補助工法,断面閉合,特S パターン
小土かぶり帯水未固結地山を曲面切羽全断面掘削早期閉合工法で突破
-新東名高速道路 高取山トンネル西工事-
発表者:清水建設㈱ 土木東京支店横浜土木営業所工務主任 白井 隆裕
(概要)新東名高速道路高取山トンネル西工事は,トンネル区間約 1,600m,土工区間約 400m,橋梁区間約 200mの工区全長約 2,200m からなる.トンネル掘削は秦野市側から伊勢原市との市境に向かって,地山状況に合わせた掘削方式を採用し施工を行った.そのうち,坑口から約 230m の小土かぶり帯水未固結地山は,全断面掘削早期閉合工法を採用しトンネルの安定化を図るとともに直上の供用市道などへの影響を最小限に抑制した.また,坑口付近に民家などが存在したため,防音設備の増強などの騒音・振動対策を図ることで周辺環境への影響を抑制した.小土かぶり区間を突破した後,途中で突発湧水(約 3.0 t/min),断層破砕帯や脆弱化した地山にも遭遇したが,水抜きボーリング工,止水注入を併用した補助工法の採用,一次支保工の補強などによる変位対策を適宜実施することで無事突破した.これらの対策により,2017 年9月の掘削開始より約2年半の歳月を経て 2020 年5月に上り線,同年7月に下り線の貫通を無事迎えることができた.
(キーワード) 小土かぶり,帯水未固結地山,全断面掘削,早期閉合工法,補助工法
土砂化した強風化岩の泥ねい化対策と長尺削孔データにもとづく切羽評価の試み
-国道 8 号柏崎トンネル-
発表者:㈱安藤・間 北陸支店柏崎トンネル作業所副所長 三沢 良太
(概要)柏崎バイパスは,柏崎市内の交通混雑の緩和と沿道環境の改善、道路ネットワークの強化を目的とする延長 11km の事業である.柏崎トンネルは,柏崎バイパスの終点側に位置し,山岳工法区間(延長 1,128m)と開削工法区間(延長 220m)の延長 1,348m で構成され,本稿では山岳工法区間について紹介する.トンネルの起点側坑口部および終点側坑口部はともになだらかな地形であり,特に起点側において土かぶり 2D 以下の区間(DⅢ区間)が約 250m 続いている.この区間の凝灰角礫岩は土砂化しており,トンネル掘削時の湧水による泥ねい化が懸念された.そのため,各種の湧水対策や泥ねい化対策を実施して掘削を進めるとともに,長尺鏡ボルトの削孔データから切羽前方の切羽評価点を予測する新たなシステムを試行した.本稿では,小土かぶり部の掘削時に実施した湧水対策,および切羽前方の切羽評価点を予測する新たな手法について報告する.
(キーワード) 軟弱地山,湧水予測,泥ねい化対策,長尺削孔データ,トンネル切羽安定度予測システム
ルーズな堆積土砂と超硬質な硬岩地山の混在する特殊地山におけるトンネル掘削の施工事例
-国道 42号 尾鷲第 4 トンネル南部工事-
発表者:前田建設工業㈱ 中部支店尾鷲第 4 トンネル作業所現場代理人 松澤 郷至
(概要)国道 42 号熊野尾鷲道路(Ⅱ期)の尾鷲第4トンネル(全長 2,471m)のうち尾鷲第4トンネル南部工事(延長 1,009.6m)は,坑口部周辺が採石場跡地で,坑口部約 80m区間においては,閉山時に盛られたルーズな堆積土砂により構成される.一方で,坑口部以深のトンネル一般部においては,非常に硬質な花崗斑岩で構成されるという,特殊な地形,地質条件であるため,坑口部とトンネル一般部のそれぞれにおいて,多様な対策を求められる工事であった.本稿では,実施した各種対策について報告する.
(キーワード) 山岳トンネル,堆積土砂,薬液注入工,補助工法,制御発破,硬岩地山,山はね,突発多量湧水,ICT
断層群における北陸自動車道直下の近接施工 -北陸新幹線 新北陸トンネル(大桐)-
発表者:㈱熊谷組 土木事業本部トンネル技術部担当副部長 中本 大悟
(概要)近接施工では,既設構造物の変形許容量や構造物の応力変化量が規定されることから新設トンネルの掘削作業においては,慎重な施工が要求されるとともに,既設構造物と新設トンネルの挙動を常時監視して周辺地山の安定を確認しながら掘削することが重要である.一方,規模の大きな断層では,本断層のほかに多くの副断層が存在し断層群となっている.断層群のトンネル掘削では,脆弱な地山状況と被圧湧水からアクシデントの規模が大きくなることが特徴である.新北陸トンネル(大桐)は,活断層である柳ケ瀬断層群における脆弱な地山状況において北陸自動車道の直下を最小離隔 43m で近接施工した.本稿では,近接施工に伴う施工計画と施工実績について報告する.
(キーワード)山岳トンネル,断層群,近接施工
各種前方探査を組み合わせた地山評価により長大卜ンネルを突破
-北陸新幹線 新北陸トンネル(奥野々工区)-
発表者:㈱大林組 大阪本店犬打峠トンネル JV 工事事務所長 小山 武志
(概要)北陸新幹線,新北陸トンネル(奥野々工区)は,福井県南条郡南越前町に延長 4,880m のトンネルを掘削する工事である.地質は美濃帯の中・古生代砂岩,粘板岩やチャートを主体としている.最大土かぶりは 500m 超となり,多くの断層(11 箇所)を伴う向斜構造を呈しているため地質が複雑に変化し,亀裂が卓越する区間や多量の湧水を伴う区間があった.このような地質リスクが想定されていたため,当初より全線で中尺・短尺のノンコア削孔検層や坑内弾性波探査などを実施した.本稿では,これらの探査情報を活用して克服した岩相変化に富む長大トンネルの掘削について述べる.
(キーワード)長大トンネル,前方探査,水圧ハンマー,トンネルナビ,TSP
地すべり地・小土被り条件下のⅡ期線トンネル沈下抑制対策
-常磐自動車道 大久トンネルⅡ期線(下り線) -
発表者:㈱竹中土木 東北支店作業所常磐自動車道大久北工事 藤野 宏英
(概要)大久トンネルは,常磐自動車道いわき四倉 IC と広野 IC のほぼ中間に位置し,Ⅱ期線トンネルの延長はL=526m,内空断面積A=68.7m2 の NATM 工法による山岳トンネルである.終点側には「藤倉地すべり地」が分布し,小土かぶり区間では,Ⅰ期線施工時の地すべり対策工として,掘削範囲内に押え盛土が施工されていた.トンネル終点側直上には,地域住民の生活道路である市道も横断している.本報では,近接構造物が存在する条件下の地すべり地において,小土かぶり未固結地山を掘削したトンネルの施工実績を報告する.
(キーワード)地すべり,小土かぶり,未固結地山,押え盛土,市道直下,沈下抑制,補助工法
トンネル直上に軟弱層が分布する小土被り区間の卜ンネル施工-阪和自動車道 青垣内山トンネル-
発表者:鉄建建設㈱ 大阪支店青垣内山作業所工事係 野口 時男
(概要)青垣内山トンネルの小土かぶり区間は,土かぶりが約 6.3m と小さくトンネル直上に軟弱な崖錐層や盛土層(果樹園)が分布しておりⅠ期線トンネル施工時には,地表面の過大な沈下が生じている.Ⅱ期線トンネルにおいても同様の変状が懸念され,果樹園への影響を最小限にする必要があった.そこで事前検討として,3次元 FEM解析による地山安定,地表面変位およびトンネル変位の予測,Ⅱ期線トンネルの設計支保パターンの妥当性を検証した.また,施工段階では計測結果に基づき補助工法(AGF 工法)の仕様変更を行った.
(キーワード)Ⅱ期線トンネル,小土かぶり,崖錐層,3 次元FEM 解析,AGF
周辺環境に配慮したトンネル掘削と ICT 技術による業務効率化 -神戸三田線のバイパストンネル-
発表者:㈱奥村組 関西土木第三部有馬口トンネル JV 工事所工事主任 山田 昂平
(概要)本工事は,兵庫県神戸市市街地から神戸市北区,三田市を結ぶ兵庫県道 15 号神戸三田線(通称「有馬街道」)の整備事業の一環として延長 639mのバイパストンネルを NATM で築造するものである.本トンネルは,交通量の多い幹線道路や民家に近接しており,施工時の騒音や振動が及ぼす周辺環境への影響を最小限とすることが課題であった.また近年,建設現場における生産性の向上が課題となっており,施工管理業務において ICT 関連技術などを活用することで,業務効率化について取り組む必要があった.本稿では,周辺環境対策の施工実績と業務効率化対策の実施成果について報告する.
(キーワード)制御発破,騒音,振動,仮設備の高性能化,MMS 計測,業務効率化
小土被り土砂地山における支障物件点在箇所条件下での山岳トンネルの施工-新名神四日市西トンネル-
発表者:㈱大林組 四国支店明神山トンネル工事事務所主任 木野村 有亮
(概要)新名神高速道路四日市トンネルは,延長 1,353mの高速道路トンネルである. 本トンネルは固結シルトと砂礫および扇状地堆積物といった軟弱層や未固結地山が主体の地質であり,地表にはゴルフ場,道路,河川等の支障物件が点在していることから地表面沈下の抑制が不可欠であった.扇状地堆積物では湧水により切羽が不安定化し掘削が困難となったが,各種補助工法と水抜きボーリングを追加し無事突破した.また,支障物件への影響監視を目的として各所に地表面沈下計測や支障物件の変位計測および地下水位の観測を実施した.その結果地表面沈下および支障物件への影響を抑制することができた.本稿はこれらのトンネル掘削の課題と調査,計測方法および対策工についての実績を報告する.
(キーワード)小土かぶり,土砂地山, 長尺鋼管先受け工,地表面沈下対策
標高約 2000mでの水路トンネル工事における施工体験-白山甚之助谷地すべり対策排水トンネル工事-
発表者:飛島建設㈱ 北陸支店白山甚之助Ⅲ期作業所現場代理人・監理技術者 日谷 昌保
(概要)甚之助谷地すべり排水トンネル工事は,石川県白山市白峰内の白山国立公園内の標高約 2,000m の場所に位置し,取水施設,排水トンネル 386m,索道施設を施工するものである.標高 2,000m,国立公園内,豪雪地帯等,制限されることが多い環境下で,安全と品質を確保するために,施工機械の変更や覆工のプレキャスト化を導入して施工した.本稿では,本工事の施工体験をもとに施工記録を報告する.
(キーワード)地すべり,排水トンネル,矢板工法,集排水ボーリング,索道施設,プレキャスト