202502

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第96回施工体験発表会(山岳)CD-ROM
主題/副題
様々な課題にチャレンジした山岳トンネルの建設およびトンネルリニューアル工事 -創意工夫、生産性・安全性向上、働き方改革-
所属
一般社団法人日本トンネル技術協会
発行所
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
2025年(令和7年)10月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

1.不均質な変質度分布を示す脆弱地山におけるトンネル掘削
 ― 国道447号 真幸工区 真幸トンネル工事(1工区) ―
清水建設(株) 九州支店 真幸トンネル作業所 所長 浅海 綾一
(概要)真幸トンネル工事(1工区)は宮崎県えびの市から鹿児島県伊佐市の県境を跨ぐ全長L=2,354mの道路トンネルのうち,宮崎県側のL=850mを掘削する工事である.本トンネルの宮崎県側坑口から1,350m付近までは熱水変質を受けた真幸変朽安山岩が分布し,膨張性を示す粘土鉱物が多量に含まれていること,ヒ素やフッ素,カドミウム等の重金属を含有していることが特徴である.当初,機械掘削が想定されていたが,実施工では変質度が異なる安山岩が不規則に分布し,硬岩出現に伴い発破掘削を余儀なくされた箇所もあったため,先進ボーリングを併用し前方地質を確認しながら掘削を行った.また,脆弱で膨張性を有する地山が想定されていたことから,土かぶり107mを超える箇所で2重支保工が設計されていたが,実施工では計測Bにより支保発生応力の評価と支保パターンの数値解析的な再現解析を実施することで,シングル支保工で支保の安定性を確認でき,掘削を完了することができた.
キーワード 熱水変質,重金属含有,脆弱地山,前方探査,計測B

2.四万十帯付加体の山岳トンネル工事における3方施工
 ― 国道441号防災・安全交付金 (口屋内トンネル(Ⅱ)工事 ―
飛島建設(株) 四国支店 口屋内トンネル作業所 工事主任 寺島 巧
(概要)国道441号は愛媛県大洲市を起点として,四万十市に至る延長114kmの幹線道路であり西土佐地区と四万十市中心部を結ぶ唯一の生活道路であり,産業振興や日本最後の清流四万十川の観光ルートとしても大きな役割を果たす重要な路線である.そのうちの西土佐口屋内地区の『口屋内バイパス』区間は道路幅が狭く,落石の危険性がある箇所も多く,異常気象時通行規制区間にも指定されていることから,現在早期整備が求められている.さらに,南海トラフ地震をはじめとした自然災害に備えるためにも,幹線道路ネットワークの強化は重要となるため,当該区間のうち,口屋内トンネル(久保川工区L=1247m)工事では早期完成に向けた対応として,トンネル掘削工において通常2交代制で施工を行うところ3交代制を図り,安全でかつ工事短縮に向けた取り組みを行ったので,その工事概要と施工結果について報告する.
キーワード 四万十帯付加体,3方施工,肌落ち,クリアショット工法,インバート桟橋

3.地表面陥没を伴うトンネル崩落後の特殊条件区間における施工について
 ― 北海道新幹線、野田追トンネル(北)他工事 ―
(株)フジタ 首都圏土木支店 野田追北トンネル作業所 工事主任 米澤 和人
(概要)北海道新幹線、野田追トンネル(北)他工事では,2021(令和3)年3月に掘削中のトンネル切羽後方約12m付近において断続的な崩落が発生し,直後に支保工の座屈等を伴う大規模崩落が発生した.その結果,坑内には約8,000m3の崩落土砂と融雪水が流入した.地表および坑内から各種対策工を実施し,2023(令和5)年5月からトンネル掘進を再開した.大規模崩落後の掘削区間には崩壊の要因となった未固結地山が分布し,河川直下を小土かぶりで通過するなど過酷な特殊条件下の施工となった.本報告では,この特殊条件区間における施工について述べる.
キーワード 北海道新幹線,トンネル崩落,地表面陥没,未固結地山,小土かぶり,河川直下

4.狭隘な仮設備ヤードにおける脆弱地山に対する突込み施工
― 主要地方道小浜北有馬線道路改良工事((仮称)大亀矢代トンネル) ―
(株)熊谷組 九州支店 大亀矢代トンネル作業所 工事主任 江上 拓哉
(概要)主要地方道小浜北有馬線(仮称)大亀矢代トンネルは,長崎県雲仙市から南島原市に位置する全長896m,縦断勾配が下り5%の道路トンネルである.本トンネルの地質は,軟質な凝灰角礫岩中に硬質な安山岩礫が混在する不均質な特徴を有しており,機械掘削の難航が予想された.トンネル直上の一部の近接構造物(生活道路や公民館等)に対して影響を極力抑止する必要があった.加えて,事前の地質調査が不十分な区間があり,切羽前方地山を精度良く把握することが課題であった.また、仮設備ヤードは幅20m×延長140mと非常に狭隘であり,作業員の安全確保や工程管理に影響を与えるため,事前計画とその後の柔軟な対応が求められた.本報文では,狭隘な仮設備ヤード,突込み施工,硬質な転石と脆弱な地質といった厳しい条件下における施工について述べる.
キーワード 狭隘,突込み施工,転石,脆弱な地質

5.令和6年能登半島地震により被災した供用中トンネルの復旧
 ― 国道249号中屋トンネル ―
(株)安藤・間 北陸支店 土木部 奥能登作業所 現場代理人 戸田 皓
(概要)国道249号中屋トンネルは,石川県輪島市と旧門前町を結ぶ重要な幹線道路であり延長1259.5mの山岳トンネルである.中屋トンネルは,平成5年に山岳トンネル工法(NATM)で建設され供用されていたが,令和6年1月1日の能登半島地震により,覆工コンクリートの大規模崩落やひび割れ,はく落等の変状が確認され,トンネルは通行不可となった.覆工コンクリートを撤去し調査した結果,支保工とインバートコンクリートにも変状が確認され対策工が必要となった.本トンネルにおける復旧方針および対策工は,熊本地震における俵山トンネルの復旧事例を参考に選定し,覆工コンクリートおよびインバートコンクリートの打ち替え範囲や支保工の縫返し範囲などを決定した.本稿では,中屋トンネルにおける変状と復旧方法について報告する.
キーワード 令和6年能登半島地震,災害復旧,山岳トンネル,縫返し工,プロテクター

6.小土かぶり・未固結砂質地山のトンネル施工における流砂現象防止対策の実施
 ― 首都圏中央連絡自動車道 芝山トンネル ―
(株)大林組 東京本店 圏央道芝山JV工事事務所 工事長 鈴木 拓也
(概要)首都圏中央連絡自動車道の芝山トンネルは,未固結砂質土,土かぶり3~17mの条件下において延長616m,掘削断面積約80m2を新設するものである.沿線のトンネルではこれまで,流砂現象により地表陥没に至った事例が複数報告されていた.本稿は未固結砂質土の条件下で山岳トンネルを掘削する際に生じる流砂現象による切羽崩壊に対して,芝山トンネルで実施した対策事例を報告するものである。本文では流砂現象が生じやすい砂質土特性や天端部の崩壊メカニズムを整理し,その対策として実施した薬液注入の試験施工及び注入式長尺先受け工の変更について述べる.試験施工では各種注入材の特性と難透水性の砂質土における浸透改良効果を報告する.
キーワード 流砂現象,薬液注入試験施工,特殊水ガラス系注入材,最小拡幅工法 ,AGF-φ工法

7.覆工コンクリート自動打設への挑戦
 ― 令和3年度木与防災木与第1トンネル ―
戸田建設(株) 広島支店 土木工事部工事室 沖田 陸
(概要)山岳トンネルにおける覆工コンクリートの打設は,狭隘な作業空間内における人力での締固め作業や重い打設ホースの移動などが苦渋作業となっている.これらに対し,筆者らは人力作業を削減するための覆工コンクリートの自動打設に取り組んでおり,自動打設のためのスライド型配管切替装置を開発し,現場適用を始めている.また,トンネル覆工コンクリートの打設作業におけるスランプ管理について,従来のスランプ管理に代わり,コンクリートポンプ車から取得できる圧送負荷,理論吐出量をリアルタイムに収集・演算することでスランプ値を把握する「覆工スランプ連続測定システム」を開発した.本稿では,スライド型自動配管切替装置や各種センサを組み合わせた覆工コンクリート施工自動化システムとトンネル覆工スランプ連続測定システムの開発,および現場適用事例と今後の挑戦について紹介する.
キーワード トンネル覆工 スライド型自動配管切替装置 ICT技術 自動打設 覆工スランプ連続測定システム

8.大深度地下の立坑および水平坑道掘削におけるメタンガス発生対策および施工合理化への取り組みについて
― 幌延深地層計画地下研究施設整備(第Ⅲ期)等事業 ―
大成・大林・三井住友特定建設工事共同企業体 主任(大成建設(株)) 縞居 公介
(概要)国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は,幌延深地層研究センターにおいて,高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発を行っている.令和5年度からは,深度350mから深度500mに向けた3本の立坑掘削および深度500mの水平坑道掘削を実施しており,令和7年度末の施設整備工期までの工事完了へ向けて施工を進めている.本工事では,坑道掘削に伴うメタンガスの発生が懸念されており,安全管理が重要な課題であった.これに対し,メタンガス発生に対する安全管理対策として,適切な監視・換気体制の構築や,リスク評価に基づく対策の強化などの取り組みを実施した.また,施設の早期完成を目指し,施工の合理化も重要な課題であった.これに対しては,立坑覆工仕様の合理化を中心に,数値解析による覆工応力の予測,PFモルタル等の材料の見直し,覆工応力測定による支保仕様の評価と施工へのフィードバックなど,技術的な工夫と改善を図った.そこで,本稿では,安全管理対策と立坑覆工仕様の合理化について報告する.
キーワード 大深度立坑,メタンガス,数値解析,PFモルタル,覆工応力測定

9.トンネル掘削自動化施工技術の実証
 ― 神岡試験坑道掘削工事 ―
鹿島建設(株) 土木管理本部 土木工務部 トンネルグループ 次長 女賀 崇司
(概要)山岳トンネル工事においては,「熟練技能者不足」,「高い労働災害の発生率」,「低い生産性」が喫緊の課題である.当社はこれらの課題解決に向けて自動化・遠隔化施工の開発を進めてきた.これは掘削作業を6つの施工ステップ①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設 に分け,各ステップで使用する重機を自動化し,それらを一元管理する建設生産システムである.2017年から本開発に着手し,2018年11月から,模擬トンネルを試験フィールドとして,各重機の自動化開発および基本動作の確認を開始した.本稿では,それら自動化重機を現実の施工環境で実証すべく,神岡試験坑道において,建設業界で初めて地山を対象としたデータに基づく自動化施工の開発に着手し,6ステップすべての自動化・遠隔化施工を実証したので報告する.
キーワード 山岳トンネル,自動化,生産性・安全性向上

10.トンネル工事における遠隔臨場によるトンネル岩判定の取組み
 ― 令和4年度 俵山・豊田道路第1トンネル工事 ―
佐藤工業(株) 中国支店 俵山第1トンネル作業所 監理技術者 飯塚 建
(概要)当現場は新技術導入促進2型の対象工事であり,テーマは「ICT等を活用したトンネル岩判定における遠隔臨場技術」であった.従来トンネル施工において,岩判定会議は発注者,受注者の関係者が施工中のトンネル切羽に集合し,実際のトンネル岩盤を目視しながら各自帳票を記入し合議により「トンネル支保区分」の判定を行うものである.これはトンネルの進行に合わせてピンポイントで行う場合や急激な地山の変化に伴い,急遽行う場合があるため,関係者を現地に集めることが難しいことがある.「遠隔臨場による岩判定会議」であればトンネル施工への影響を最小限に抑え,関係者のスケジューリング緩和,移動時間の削減が可能となり,業界全体の課題でもある生産性向上が見込まれるものである.
キーワード 遠隔臨場,点群データ,4.9GHz,ステレオカメラ,LiDAR,eYACHO

11.道東自動車道4車線化工事における供用線近接施工および厳冬期の品質確保
 ― 道東自動車道 新得工事 広内トンネル ―
(株)鴻池組・(株)中山組特定建設工事共同企業体 NEXCO新得工事事務所 副所長 手塚 聡正
(概要)道東自動車道新得工事は,道東自動車道トマムIC~十勝清水IC間の約9.5km区間の4車線化工事のうち,上川郡新得町内でのトンネル,土工および橋梁下部工事などを行うものである.広内トンネルは花崗岩を発破工法で掘削する計画であり,供用線トンネルと覆工の離隔が約18mで近接施工に該当した.トンネル掘削が供用線に対して影響を与える可能性があったため,掘削方法の検討や各種の計測を行って施工時の挙動を把握した.また,新得町は十勝地区では唯一,特別豪雪地帯に指定され,冬期の最低気温は-20℃に達する非常に寒さが厳しい環境であり,厳冬期の覆工コンクリートの品質確保が求められた.本報文では,供用線に近接してトンネル掘削を実施する際の課題と対策,ならびに道東地域での厳冬期における覆工コンクリートの長期耐久性の確保に向けた取り組みについて報告するものである.
キーワード 4車線化工事,供用線近接施工,制御発破,厳冬期の覆工コンクリートの長期耐久性の確保,保温湿潤養生

12.河川直下最小土かぶり1.5mでのトンネル掘削
 ― 北海道新幹線 磐石トンネル(北)他 ―
西松建設(株) 北日本支社 札幌支店 新幹線磐石出張所 阿部 正汰
(概要)本工事は,北海道新幹線建設事業の新函館北斗駅~新八雲(仮称)駅にある全長6,710mの磐石トンネルのうち,本坑延長3,150m,斜坑450mを施工するものである.磐石トンネルの当初計画は,磐石トンネルL=4,540m(以下,旧磐石トンネル)と,祭礼トンネルL=2,000m(以下,旧祭礼トンネル)の2本のトンネルに分割されていた.しかし,磐石トンネルの坑口には本線への土砂流入防止のための砂防堰堤・流路工といった大規模な対策が必要なこと,河川内に橋脚を設置する必要があり,基礎の洗堀防止・躯体防護のための護岸工が必要となるため縦断線形を見直し,両トンネルを一本のトンネルとした.本工区ではこの計画変更に伴い,両トンネル間を流れる下二股川直下を最小土かぶり約1.5mで掘削する必要が生じた.変更当初は開削工法案も検討されたが,トンネル案との比較検討の結果トンネル構造に決定された.本稿は,この河川直下最小土かぶり1.5mでのトンネル掘削の施工実績を報告するものである.
キーワード 小土かぶり,地山改良,補助工法

13.離島(長崎県対馬島)における山岳トンネル施工について
 ― 主要地方道厳原豆酘美津島線道路工事((仮称)箕形トンネル) ―
(株)奥村組 九州支店 東原調整池工事所 工事係 宮地 志門
(概要)主要地方道厳原豆酘美津島線道路改良工事((仮称)箕形トンネル)は,長崎県対馬市の県道24号線において,現道の狭隘な幅員や起伏・蛇行による線形不良を解消することを目的とした,吹崎地区と箕形地区を直結する延長740mのトンネルを築造する工事である.掘削方式は発破掘削を採用しているが,トンネルの起点部および終点部に集落が近接していることから,発破時に生じる騒音・振動による民家への影響が懸念された.このため,これらの影響を低減する施工方法や管理方法が課題となった.さらに,トンネル資材の多くを島外から輸送する必要がある対馬島では,悪天候の場合に搬入予定が計画通りに進まなくなることに加え,通常の資材搬入とは異なり海上運送業者を経由することから,日程調整などの連絡が煩雑になることも課題となった.そこで本稿では,これらの課題に対する解決策とその効果について報告する.
キーワード 山岳トンネル,騒音,振動,制御発破,離島,業務効率化

14.国道及び発電所進入路直下における大断面NATMトンネルの施工について
 ― 大野油坂道路川合トンネル長野地区工事 ―
青木あすなろ建設(株) 大阪土木本店 川合トンネル作業所 担当技術者 廣松 直人
(概要)川合トンネルの終点側坑口部では,国道(土かぶり7.0m)や発電所進入路(土かぶり2.7m)直下を施工するため,道路の沈下抑制が特に重要であった.そのため,掘削前に道路管理者である福井県(国道158号)や電源開発(長野発電所進入路)との協議を行い,路面沈下量を30㎜以下で管理することとなった.また,定期的に長野発電所へ発電設備を納入する際,運搬用の80tトレーラーが走行するため,その車両荷重に対しても支保工や覆工コンクリートが耐えうる構造とする必要があった.本報告では,地表面沈下抑制対策,施工時の計測,支保構造等について報告する.
キーワード 小土かぶり,地表面沈下抑制,補助工法,早期閉合,超長尺鋼管先受け工

15.鉄道直下における長尺パイプルーフの施工およびトンネル掘削
 ― 東北本線金谷川・南福島間福島西道路こ道橋新設工事 ―
鉄建建設(株) 東北支店 JV福島西作業所 工事係 佐々木 理富
(概要)本工事は,東北本線直下を通る道路トンネルを山岳工法で施工するものである.そのうち東北本線下りと国道下り線が交差する箇所では,土かぶりが約7.9mと小さい.この箇所の当初設計は,トンネル掘削に伴う軌道への影響を最小限とし,列車運行に支障させないためにトンネル掘削の補助工法として薬液注入工法およびパイプルーフ工法が計画されていた.パイプルーフ工法(L=65.0m)の施工にあたり,事前のボーリング調査結果を踏まえ,現地条件,地盤条件を考慮しパイプルーフ工の計画変更を実施した.トンネル掘削では,事前の2次元FEM解析により補助工法の効果を確認したうえで,実施工の予測を行った.線路直下のトンネル掘削前には試験施工区間を設定し,掘削時の沈下量の傾向を把握,対策工(1次インバート)の検討を実施した.
キーワード 山岳トンネル,鉄道直下,パイプルーフ工法,泥濃式推進工法,薬液注入工法,2次元FEM解析

16.厚い崖錐層が堆積する坑口部の設計と施工
 ― 道路改築工事(大滝トンネル本体工) ―
(株)大林組 東京本店 長野道一本松トンネル工事事務所 工事係長 後藤 尚貴
(概要)西関東連絡道路は,埼玉県と山梨県を結ぶ地域高規格道路であり,このうち大滝トンネルは埼玉県秩父市に位置する延長 2,053m の片側 1 車線の道路トンネルである.本トンネルの到達側坑口部は掘削断面が三車線の大断面であり,転石を多く含む層厚17mの緩い崖錐層が堆積していた.着工前の地質調査では崖錐層や基盤岩分布を正確に特定することが難しく,もしトンネル脚部に崖錐層が出現する場合には,支保の著しい沈下・変位が懸念された.本稿では,厚い崖錐層が堆積している難条件下での大断面トンネル坑口部の設計と施工実績について述べる.
キーワード 崖錐層,坑口部,大断面,垂直縫地工,動態観測