201803

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第82回施工体験発表会(山岳) CD-ROM
主題/副題
課題克服に取り組んだトンネル工事ー新技術、創意工夫、周辺環境への配慮ー
発行所
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
平成30年6月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

脆弱地山における供用トンネルの近接施工実績
発表者:戸田建設㈱ 関東支店土木工事部技術課課長 早津 隆広
(概要)上信越自動車道天神堂トンネル工事は供用中のⅠ期線トンネルとほぼ平行した位置で天神堂トンネル(延長537m)と鮫ヶ尾トンネル(延長366m)2本のトンネルを天神堂トンネル側から機械掘削にて片押しで施工する工事である。トンネル地質は、ほぼ全線にわたり新第三紀中新世の砂岩泥岩互層から構成された地山強度比が2~4の脆弱地山であり、トンネル掘削影響による供用Ⅰ期線トンネルの変状が懸念されたため、供用Ⅰ期線の影響監視計測を行いながら、地山を極力緩ませない慎重な施工を実施した。本稿は供用Ⅰ期線の影響監視計測工と変位抑制対策として補助工法を併用しながらトンネル全線にわたり早期閉合型全断面掘削工法を採用した天神堂トンネルの施工実績について報告するものである。
(キーワード)脆弱地山,近接施工,影響監視計測,早期閉合型全断面掘削,補助工法

トンネル掘削によるゆるみ領域とグラウンドアンカー定着部をCIMで照査
- 国道45号 三陸沿岸道路 小鎚第2トンネル-
発表者:東亜建設工業㈱ 東北支店小鎚第2トンネル作業所所長 内倉 廉二
(概要)三陸沿岸道路は,宮城,岩手,青森の太平洋沿岸を結ぶ全長359kmの自動車専用道路であり,東日本大震災からの早期復興のリーディングプロジェクトとして『復興道路』に位置づけられ,かつてないスピード感をもって整備が進められている.そのうち,小鎚第2トンネルは,全長23kmの釜石山田道路に属し,岩手県大槌町中心部西側の山地を貫く延長975mのトンネルである.本稿は,貫通側となる起点側坑口に斜面対策として配置されるグラウンドアンカー定着部とトンネル掘削によるゆるみ範囲の位置関係を把握するため,CIMにて3次元モデルを作成し,設計照査,施工計画および施工管理に利用した事例を報告する.
(キーワード)CIM,設計照査,施工方法の検討,施工管理

トンネルの発破掘削におけるICT施工の取組み
―宮古箱石道路(復興支援道路)国道106号箱石地区道路工事―
発表者:㈱安藤・間 東北支店新箱石トンネル作業所工事主任 杉浦 規之
(概要)本工事は掘削断面が100㎡を超える大断面トンネルであり,地質は粘板岩,砂岩およびチャートを主体とした硬質な岩盤である.ただし,事前の地質調査から,水平~高角度の様々な亀裂が発達していること,局所的に破砕を受け,角礫~細礫状を呈する脆弱な地質の出現が予想されたことから,切羽における肌落ち災害の発生が懸念された.また,熟練した作業員が減少するなか,安全かつ効率的に施工を進めるかが課題であった.本稿では,このような課題を踏まえ安全かつ効率的にトンネル掘削を進めるために適用した穿孔ナビゲーション付きドリルジャンボ,穿孔データよりトンネル切羽の安定度を予測するTFS-learning,掘削発破により発生する弾性波を利用した切羽前方探査(TFT探査)の活用等について報告する.
(キーワード)穿孔ナビゲーション付きドリルジャンボ,TFS-learning,TFT探査,トンネルCIMシステム

小断面トンネルにおける防音対策と狭隘な施工ヤードでの坑口部施工
―大滝江筋用水路整備工事(トンネル) ―
発表者:鉄建建設㈱ 東京支店元JV好間作業所 佐藤 真穂
(概要)本工事は,大滝江筋用水路の老朽化に伴い,用水路の新設を行なうもので,好間川上流の取水工付近からトンネル内水路(L=469m 掘削断面13.1~16.7㎡)及び明り水路(L=106m)を経て大滝沈砂池まで導水する用水路工事である.用水は,農業用水路として整備されたものであったが,現在は上水としても利用されている.トンネル掘削は終点側坑口からの発破掘削の昼夜施工で計画されていた.掘削起点坑口となる終点側坑口から近隣民家までの離隔距離が300m程度であったため,防音対策を行なう必要があった.トンネル到達側の起点側坑口は,供用中の水路からほぼ垂直に切立った斜面となっており,既設水路トンネル上部に設置されていた落石防護柵には直径1mを超える落石や土砂が堆積している状態であり,トンネル到達前に対策工を行う必要があった.
(キーワード)用水路トンネル,小断面トンネル,発破掘削,改修工事,狭隘施工

国道直下および集落に近接した山岳トンネルの施工-長崎県五島列島 三日ノ浦トンネル-
発表者:㈱竹中土木 大阪本店技術・設計部課長 鶴窪  誠司
(概要)三日ノ浦トンネルは,長崎県南松浦郡上五島町三日ノ浦地区から青方地区を結ぶ一般国道384号の道路改良工事のうち,延長794m,内空断面約56m2のNATM工法による山岳トンネルである.本トンネルの発進側(終点側)坑口は,脆弱な崖錐が流れ盤のように堆積し,坑口から約20mの断層破砕帯部のトンネル直上約9.5mには供用中の国道384号が横断している.また,到達側(起点側)坑口から約50mは,沢地を埋戻した盛土の上に国道384号が横断している.国道384号は長崎県上五島町を周遊している主要幹線道路であり,路線バスやスクールバス,緊急車両が通行し,当該地域には迂回路はなく,トンネル掘削に伴う大きな沈下や崩落により車両等の通行不可や交通事故を発生させてはならない.そのため,国道の沈下抑制の基準値は20mmと厳しく,国道沈下を抑える対策工の計画およびリアルタイム計測管理が重要であった.また,民家や集落が近接することから周辺環境対策が重要であった.本稿では,小土かぶり,偏圧地形,近接施工の特殊条件下のトンネル施工について報告する.
(キーワード)山岳トンネル,小土かぶり,偏圧地形,近接施工,補助工法,環境対策

河川・ゴルフ場・国道直下を小土被りで通過するトンネル施工
-東北中央自動車道 やまがたざおうトンネル工事 -
発表者:㈱熊谷組 東北支店やまがたざおう工事所 大竹  輝
(概要) 山形蔵王トンネルは,営業中のゴルフ場,一級河川である酢川及び主要路線である国道13号の直下を横断し,全線にわたり小土かぶり2D以下となる位置に延長944m全線DⅢの支保パターンのトンネルである.地質は脆弱な酢川泥流堆積物や凝灰角礫岩で構成され,また硬質な巨礫の出現が予想されていた.本稿では,このような条件下のもと,トンネル掘削による周辺環境への影響を最小限に抑えるため,事前の前方地質調査や計測結果を用いて,掘削工法や掘削方式,補助工法を選定し施工を行ったことを報告する.
(キーワード)切羽,小土かぶり,軟弱地山,一級河川,ゴルフ場,巨礫,国道

厳しい条件下における日本最大級水路トンネルの施工―天ケ瀬ダム再開発トンネル減勢池部建設工事―
発表者:大林・飛島特定建設工事共同企業体工事主任 福留 朋之
(概要)天ケ瀬ダム再開発トンネル式放流設備は、天ケ瀬ダムの放流能力増強を主目的としており、その中で当JVが担当する減勢池部建設工事は、主ゲートから吐出された高圧・大容量の放流水を宇治川へ注ぐ前に減勢させるために日本最大級の断面を必要とするトンネル式減勢工築造工事である。本報文では、厳しい施工条件下においてRC 円柱支保工(新発想の破砕帯対策工)や特殊形状の導坑コンクリートおよび大断面拡幅掘削という過去のトンネル現場には例のみない、創意工夫した施工成果について述べる。
(キーワード)超大断面水路トンネル、設計・施工一括発注方式、大規模破砕帯対策工

発破で発生する超低周波音の消音装置の開発と大断面トンネルでの効果検証
―長門俵山道路 大寧寺第3トンネル北工事-
発表者:飛島建設㈱ 大寧寺トンネル作業所現場代理人 宇都宮基宏
(概要)長門・俵山道路大寧寺第3トンネル北工事は、長門市深川湯本~俵山小原間の最北に位置する延長1872.8mの大寧寺第3トンネルうち、北側の1223.9mを施工する工事である。本工事では坑口の近傍に民家が点在しており、発破音の住環境への影響が懸念された。設計では発破音対策として防音扉を設置する計画となっていたが、当初設計の防音扉では低減効果が不十分となる恐れがあった。そこで、通常の防音扉に比べ質量と剛性を増強した高性能防音扉を導入し、低減効果の向上を図った。さらに、窓や建具のがたつきの発生原因であり、また発破音の卓越周波数となりやすい4、6、8Hzの超低周波音を対象とした共鳴型消音装置を開発して適用した。これらの対策効果について、発破音を測定して検証したので結果を報告する。
(キーワード)発破,超低周波音,防音扉,共鳴型消音装置,音響管

「排気排水・注入ホース」による覆工コンクリート天端部の充填性向上対策-立野ダム仮排水路工事-
発表者:青木あすなろ建設㈱ 土木技術本部エンジニアリング事業部課長 駒田 憲司
(概要)トンネル覆工コンクリートの天端部の打込みには吹上げ方式が採用されている。天端部は背面に空洞を残さずコンクリートを充填することが重要であるとされているものの充填状況を目視確認できないため、充填不足や打設にともなう巻込み空気・ブリーディング水の残留などにより、背面空洞の発生や密実性の低下など不具合が生じやすい。従来技術では予めエア抜きホースを設置し、真空ポンプに接続して打設時に生じる空気・ブリーディング水を吸引して排除する方法や、充填材を注入するためのグラウトホースを設置し、後充填により充填性を確保する方法などがある。今回開発した「排気排水・注入ホース」は、排気排水と注入の2つの機能を1本のホースに集約し、覆工コンクリートの品質向上とともに施工の効率化とコストの縮減を図ることができる。ここでは、「排気排水・注入ホース」の概要と実トンネルへ適用した結果について報告する。
(キーワード)覆工コンクリート、巻込み空気、ブリーディング水、排気排水、充填材、注入、排気排水・注入ホース

長大トンネルにおけるコンピュータジャンボを活用した合理的な施工と生産性向上への取り組み
-宮古盛岡横断道路 新区界トンネル(仮称)-
発表者:鹿島建設㈱ 技術研究所岩盤・地下水グループ上席研究員 宮嶋 保幸
(概要)新区界トンネル(仮称)は,宮古盛岡横断道路のうち区界峠を貫く全長4,998mの長大トンネルである.掘削を早期に完了させることを目的として,両坑口からの掘削に加えて,途中,避難坑を本坑の作業坑として利用することで,4箇所での本坑同時掘削を実施して早期貫通を図った.また,穿孔能力の高いフルオートコンピュータジャンボを導入し,自動穿孔,高精度な発破による掘削作業の高速化を図るとともに,穿孔作業を専任オペレータ1名で行うなど,トンネル掘削の生産性向上に向けた試行を行った.さらに,コンピュータジャンボの穿孔データを自動取得する機能を利用し,地山状況を迅速に評価するシステムを開発した.本稿では,4箇所での同時掘削やコンピュータジャンボの導入によって取り組んだ急速施工とコンピュータジャンボを利用した地山評価システムを開発し,これらによって安全で合理的な施工を行った事例について報告する.
(キーワード)コンピュータジャンボ,地山評価,ICT,情報化施工,地球統計学 ,余掘り低減

近接するⅠ期線トンネルへの影響を考慮した制御発破―国道185号線休山トンネルー
発表者:西松建設㈱ 休山トンネル出張所副所長 曽根 陽生
(概要)本トンネルは,平成14年3月に暫定2車線で供用した休山トンネルⅠ期線と並行して計画されたⅡ期線トンネル全延長L=1704mのうち,阿賀側L=1014m(坑門工含む)の新設工事である.新設するⅡ期線トンネルは,坑口部の直上周囲に民家が多数存在し,地表面沈下の抑制やⅠ期線トンネルの坑内変位を考慮し,全断面早期閉合にて掘削を開始した.坑口より150m付近においては,切羽全体に硬質な花崗岩が現れ,掘削進行が著しく低下した.当初,割岩工法を採用し一定の効果が得られたが,進行に伴い切羽の推定一軸圧縮強度が80MPaにも達し,工事費用の高騰,工程遅延が懸念された.このような状況から,当初設計された発破掘削開始位置より早期に発破掘削を開始した.しかし,供用中のⅠ期線トンネルへの影響を最小限に抑える必要から,発破振動の低減対策ならびに計測管理が重要であった.本報では,その計画と施工について報告する.
(キーワード)近接施工,発破掘削,発破振動,制御発破,電子遅延式電気雷管

固結度が高く,亀裂の少ない火山礫凝灰岩におけるトンネル掘削方式の検討
-東北中央自動車道 にしごうトンネル工事-
発表者:鉄建建設㈱ 本社土木本部トンネル技術部 松本 拓磨
(概要)にしごうトンネルの地質は新第三紀中新世の火山礫凝灰岩を主構成としており,設計段階では岩の圧縮強度が14.5N/mm2~29.4N/mm2程度であったため,200kW級の自由断面掘削機による機械掘削方式(上半先進ベンチカット工法)で掘削を行っていた.しかし,トンネル切羽に出現する火山礫凝灰岩は熱水変質による珪化作用などで固結度が高く,硬化しており,亀裂の見られない一枚岩の様相で,機械掘削方式では標準掘削能力の5~6割程度しか確保できない状況となり,計画工程を大きく逸脱することが想定された.しかし,凝灰岩等の堆積岩については自由断面掘削機による切削がトンネル掘削に有効であることから,掘削能力の改善を図るため発破を補助的に使用して切羽に亀裂を発生させることとし,掘削機械種別と使用爆薬量について試験施工を行い,最適な掘削方式を検討した.
(キーワード)新第三紀中新世,グリーンタフ,火山礫凝灰岩,凝灰角礫岩,自由断面掘削機,熱水変質,珪化作用

高性能電子雷管を使用した制御発破について―町道三枚堂大ヶ口線 (仮称)三枚堂大ヶ口トンネル―
発表者:佐藤工業・菱和建設特定共同企業体三枚堂トンネル作業所 乾川 尚隆
 (仮称)三枚堂大ヶ口トンネルの終点側坑口は閑静な住宅地に近接しており、坑口にもっとも近い建屋の距離は約30mであるためトンネル掘削の進行にともない発破振動による住民生活への影響が懸念された。発破振動対策として高性能電子雷管を用いた制御発破および機械掘削工法の比較検討を行った。その結果、振動低減効果、経済性、工期への影響を考慮し高性能電子雷管を用いた制御発破を採用した。本報告は高性能電子雷管を用いた制御発破に関する発破方法、発破振動低減効果について報告する。
(キーワード)高性能電子雷管,制御発破,発破振動,住宅地,チャート、砂岩

河川・市道・住宅密集地直下を最小土被り6mで補助工法を駆使して突破
-九州新幹線(西九州),木場(こば)トンネル他工事-
発表者:清水建設㈱ 土木技術本部地下空間統括部 古木  弘
(概要)木場トンネルは凝灰角礫岩主体の地山を片押しで掘削するV字型縦断線形の山岳トンネル(延長2,885m)である.同トンネルには,土被り約6~9mで河川,埋設管を有する市道および住宅密集地と交差する小土被り区間(全長197m)があり,その区間には,掘削対象となる脆弱化の著しい流紋岩と硬質な安山岩の成層の上に,地下水を含む砂礫層が分布していた.そのため,切羽崩落や突発湧水による地下水・河川水の流入などのリスクが想定された.そこでFEM解析を実施した上で,長尺鋼管先受工などの切羽の安定化対策と,水抜き孔や河床保護コンクリートなどの地下水位低下対策および河川水引込み防止対策を実施した.結果,切羽を安定させ,地表面沈下などの周辺環境への影響を最小限に抑えて,無事に小土被り区間を突破することができた.本稿では小土被り区間の施工にあたり,想定されたリスクと対策,FEM解析および施工方法について報告する.
(キーワード)小土被り,河川直下,補助工法,拡幅方式,長尺鋼管先受け工,FEM解析

既設鉄道トンネルの拡幅を伴う長大トンネル掘削と重金属ずりへの対応
-一般国道340号(仮称)押角トンネル築造工事-
発表者:㈱奥村組押角トンネル工事所所長 岩本 容昭
(概要)本工事は,旧JR岩泉線のトンネル(以下既設トンネルと呼ぶ)を拡幅し車道とする工事である.既設トンネルを含む路線は昭和22年秋に開業しており,完成から約70年経過したトンネルを拡幅する工事となった.トンネル延長は3,094mであり,坑口部の地形条件から終点側坑口は既設トンネルの坑口とずれており,坑口から300m程度の地点で合流する線形となっている.既設トンネルを拡幅することから,掘削当時の発破によるゆるみ域の影響が懸念され,実際に既設トンネルの背面が空洞化し本トンネルの断面より地山側に及んでいる箇所が見られた.また,掘削残土は自然由来重金属であるヒ素が溶出基準値を超えることから,要対策土として全量ベントナイト混合土による封じ込めを行った.本稿は,既設トンネルと本トンネルの合流区間,背面空洞部,およびベントナイト混合土を用いた要対策土の封じ込めの施工結果について報告するものである.
(キーワード)既設トンネル拡幅,背面空洞,要対策土の封じ込め,ベントナイト混合土