202102

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第88回施工体験発表会(山岳) CD-ROM
主題/副題
「課題克服に取り組んだトンネル工事」-新技術、創意工夫、周辺環境への配慮-
発行所
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
2021年(令和3年)10月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

小断面・複雑形状トンネルにおける設計・施工の取り組み - 中川町 計測トンネル工事 -
荒井建設㈱ 中川町計測トンネル工事 現場代理人 飛彈野 大介
(概要)計測トンネルは,延長 99.9m(掘削延長 92.0m)の地震地殻変動を観測するためのトンネルである。当該トンネルは,掘削断面積 20m2 程度を主体とした小断面と,交差部・屈曲部が連続する複雑な線形を NATM により施工するものであり,施工例の少ない特殊な条件であったことから,文献・論文などを参考にさまざまな設計・施工の検討を行った.本稿では,①施工機械を踏まえたトンネル掘削断面の見直し,②安全性・施工性を考慮した交差部・屈曲部の支保計画,③交差部の扁平断面での安定検討,④発破振動の影響を考慮した交差部・屈曲部の掘削計画,⑤交差部・屈曲部の防水シート施工,⑥覆工コンクリート補強計画,⑦覆工コンクリート打設計画(セントル・配合・養生)の取り組みを報告する.
(キーワード)地震地殻変動観測施設,小断面,交差部,扁平断面,2次元数値解析,中流動コンクリート

山岳トンネルにおける吹付けコンクリ-ト工の生産性向上事例 -大分212号跡田トンネル(東工区)新設工事-
大成建設㈱ 九州支店 大分 212 号跡田トンネル(東工区)新設工事作業所 福島 淳平
(概要)本報は,山岳トンネルにおける吹付けコンクリート工の生産性向上事例を紹介するものである.一般的な設計基準強度 18N/mm2 の吹付けコンクリート工では,単位セメント量が 360kg/m3,スランプが 8~12cm のベースコンクリートを用い,コンクリートポンプ(最大理論吐出量 25~30m3/h)で配管圧送しつつ,配管途中で圧縮空気と急結剤を管内に混入させて施工が行われている.その際のコンクリートポンプ吐出量は 12m3/h 程度で施工することが多い.つまり,従来の吹付けコンクリート工においては,ポンプ吐出量能力の 50%程度の能力しか使用しておらず,設備能力の観点から生産性向上が可能な状況であった.本報では,ベースコンクリートのスランプ最適化を図り,コンクリートポンプ圧送負荷を低減することで,吹付けコンクリートのはね返り率を増加させることなく,吐出量を 20m3/h まで増加させることで吹付けコンクリート工の生産性を向上させることができた事例を紹介する.
(キーワード)吹付けコンクリート,スランプ最適化,はね返り率,ロス率,生産性向上

ICT-Full 活用による生産性向上への取り組み -新東名高速道路 川西工事 谷ヶ山トンネル-
清水建設㈱ 土木東京支店横浜土木営業所 新東名高速道路川西工事 工事主任 小田 聡
(概要)建設業の技能労働者・若手入職者の減少や長時間労働は大きな課題である.そこで調査・設計から施工・検査,さらには維持管理・更新の全ての過程で全面的に ICT 技術を導入し,生産性を向上させることは重要である.新東名高速道路川西工事では,受発注者が一体となって測量,設計,施工,検査,納品に至る一連の過程で ICT をフル活用し,生産性の向上に取り組んでいる.そのうち山岳トンネル工区では,トンネル掘削における余掘りの低減,吹付コンクリート施工のサイクルタイム改善,覆工コンクリート締固め作業の自動化,ICT 建機による坑内重機土工の情報化施工,ウェアラブルカメラによる遠隔立会検査,覆工コンクリートの点検効率化,そして BIM/CIM を活用したデータの一元管理など,多種多様な項目について全面的に ICT を導入することで生産性向上を目指す取り組みを実施している.本稿ではその導入事例について報告する.
(キーワード)ICT フル活用,BIM/CIM,生産性向上

大土かぶり区間の前方地山予測と変状対策および DX による遠隔岩判定
-冠山峠道路第 2 号トンネルⅡ期工事-
㈱大林組 大阪本店 冠山峠 2 号トンネル工事事務所 工事長(監理技術者)柏原 宏輔
(概要)冠山峠道路第 2 号トンネルは,岐阜県揖斐郡揖斐川町~福井県今立郡池田町をつなぐ冠山峠道路事業の一環であり,Ⅰ期工事が平成 26 年 1 月~平成 29 年 8 月に実施され,平成 29 年 11 月からⅡ期工事を継続中である.冠山は標高1250m,最大土かぶりは 720m であり,断層部では大きな土圧が作用し,トンネルに変状が生じるリスクが懸念された.そこで当現場では,様々な前方探査技術を活用し,地山性状や断層の分布位置の把握を行い,掘削工事を進めた.一部変状があった区間においては各種の変状対策を実施するとともに,計測結果を整理,その効果を検証し,以降のトンネル掘削に反映した.また受発注者による支保パターン決定の打合せと位置付けられる「岩判定会議」において,ICT 技術を活用し,トンネル工事における DX を推進した.
(キーワード)大土かぶり,前方探査,変状対策,岩判定,遠隔臨場,DX

大規模な変状が発生した脆弱な蛇紋岩地山におけるトンネルの施工
-真円形三重支保によるトンネル掘削-
清水建設㈱ 北海道支店土木部音中トンネル作業所 副所長 大久保 征一郎
(概要)一般国道 40 号音威子府村音中トンネルは,音威子府バイパス(L=19.0 ㎞)のほぼ中央に位置する延長 4,686mの道路トンネルである.地質は蝦夷層群の泥岩,空知層群の玄武岩類およびそれらに貫入した蛇紋岩で構成されている.蛇紋岩区間は土かぶりが最大 320m,地山強度比がおおむね 0.1 以下と脆弱な地質であったことから,二重支保工を採用して掘削を進め,変位・応力の発生状況を確認しながら玄武岩類(緑色岩)との地層境界近傍まで掘削を進めていた.しかしながら,境界部付近の切羽近傍において鏡面の押出し,および盤膨れが確認され,その後,変状は坑口方向へ波及し,切羽から延長 180m区間まで盤膨れが拡大した.また,切羽から約 250m地点を中心にアーチ部支保工の破壊も確認され,最終的には崩落岩塊によりトンネルが閉塞するに至った.このような大規模変状区間の,過去に類を見ない再掘削について報告する.
(キーワード)蛇紋岩,微閃緑岩,真円形三重支保構造,空洞充填,地山改良,早期断面閉合

膨張性粘土鉱物を含む地山条件下での早期閉合を含む補助工法の施工
-北海道新幹線、渡島トンネル(台場山)-
西松建設㈱ 北日本支社 新幹線渡島出張所 工事係 小山内 綺羅
(概要)本工事は,北海道新幹線建設事業の新函館北斗駅~新八雲駅(仮称)にある全長 32,675m の渡島トンネルのうち新青森起点 155km160m~158km660m の本坑延長 3500m,および斜坑 447.9m を施工する工事である.渡島トンネルは全部で7 工区に分かれ施工をしており,本工区は起点側(新函館北斗側)から 2 番目に位置する台場山工区である.本トンネルでは,斜坑掘削完了後,本坑掘削に移行して 155km680m 付近を掘削中に急激な変位増加,および吹付コンクリートにクラック等の変状が見られ,155km716m 地点では凝灰質砂岩・シルト岩の変質帯が出現した.先進調査ボーリングのコアにより地質調査を行った結果,この変状区間では膨張性粘土鉱物(スメクタイト)の含有が確認された.変質帯区間の内空変位等の外力に対する抵抗性,および膨張性粘土鉱物による盤ぶくれ対策として,完全円形に近い全断面早期閉合工法を含む補助工法の施工を行った.その結果,早期閉合の支保効果が顕著に表れ,変位を収束させることができた.
(キーワード)膨張性粘土鉱物,小土かぶり,河川影響範囲,塑性変形

多くの断層破砕帯の出現が予想されたトンネル施工 - 有田海南道路 5 号トンネル工事 -
戸田建設㈱ 大阪支店 有田海南道路 5 号トンネル 監理技術者 日高 洋
(概要)本トンネルは,和歌山県有田市から海南市までの国道 42 号有田海南道路事業の一部である延長 L=2,033mの道路トンネルのうち,有田市側 L=1,206mを施工するものである.地質は三波川帯に属する中生代三畳紀~ジュラ紀の三波川変成岩で構成され,トンネル全線において緑色片岩、黒色片岩、蛇紋岩等を含む大小多数の断層破砕帯の出現が予想されていた.このため,本工事では,切羽前方探査を用いて破砕帯の位置を確認しながら慎重に掘削を進めていたが,想定断層位置より数十 m 手前で切羽崩落が発生し,支保工の倒壊,変状が生じた.本稿では,切羽崩落部の対応検討(発生要因の調査分析,対策工の検討)と,崩落部以降の施工(補助工法,支保工,切羽前方調査等)について報告する.
(キーワード)切羽崩落,応急対策工・復旧対策工,崩落部以降の施工

強風化・土砂化したトンネルにおける効果的な沈下・変位抑制について
-国道 7 号大岩川トンネル工事における対策工の選定事例とその効果-
㈱奥村組 東北支店 国道 7 号大岩川トンネル工事所 現場代理人 三浦 良平
(概要)国道 7 号大岩川トンネル工事は,日本海沿岸東北自動車道(路線延長 322km)のうち新潟県と山形県を結ぶ朝日温海道路(区間延長 40.8km)の中で,山形県側に位置する 1,058m の道路トンネルを築造するものである.本トンネルの地質は粗粒玄武岩を主体とした比較的硬質な地層で構成されているが,両坑口では基岩層が強風化・土砂化しており,部分的に泥岩が挟在していることから,掘削開始直後に急激な沈下が発生し,的確な対応が求められた.本稿は施工の際に生じた課題と,実施した対策工並びに急激な沈下を踏まえ,貫通点側掘削時に実施した対策工の効果について報告するものである.
(キーワード)粗粒玄武岩,泥岩,強風化,土砂化,破砕帯,水平ボーリング,急激な沈下,変位速度

超大型自由断面掘削機と制御補助発破併用による硬岩地山のトンネル掘削
-平成 30 年度名護東道路 4 号トンネル工事-
飛島建設㈱ 九州支店 名護東トンネル作業所 工事主任 福山 一世
(概要)名護東道路 4 号トンネル工事は,名護市伊差川~数久田間の最南に位置する延長 1021.0m を施工する工事である.本工事では出口側坑口の近傍等に民家が点在しており,施工時の発破による騒音や振動の住環境への影響が懸念された.当初設計では掘削方法を機械掘削とし,自由断面掘削機 200KW 級で施工を行う計画となっていたが,地山が想定よりも硬質の場合には掘削が困難になる恐れがあった.さらに,民家への振動や騒音の影響を最小限に抑制する必要があったため,施工時には掘削機械を高性能な超大型の自由断面掘削機 350KW 級に変更して掘削能力の向上を図った.しかしながら,想定よりもさらに硬質な地山の出現により施工は難航したため,さらなる対策として制御補助発破を採用した「超大型自由断面掘削機と制御補助発破併用による硬岩地山のトンネル掘削」という前例の極めて少ない施工方法での掘削を行った.本報では,これらの施工概要とその効果について,工事実績を踏まえて報告する.
(キーワード)制御補助発破,超大型自由断面掘削機,騒音,振動

穿孔作業の集中管理による山岳トンネルの発破の高度化 -玉島笠岡道路六条院トンネル工事-
㈱安藤・間 建設本部 土木技術統括部 技術第三部 トンネルグループ 天童 涼太
(概要)山岳トンネルの施工は,1980 年代の NATM の普及により機械の高度化や大型化が進んだ.一方で,いまだに施工の多くの部分を熟練作業員の技能に頼っている現状があり,近年は,熟練作業員の減少や新規入職者の不足への対応が喫緊の課題となっている.このような背景のもと,筆者らは,ICT により山岳トンネル工事の生産性を飛躍的に高める取組みとして,「山岳トンネル統合型掘削管理システム」の開発を推進している.その一環で,トンネル坑内に設置した中央制御室に施工データを集約し,穿孔作業を集中管理するシステムを構築し,国土交通省中国地方整備局発注の玉島笠岡道路六条院トンネル工事に適用した.本稿では,その技術概要および現場適用によって得られた効果について報告する.
(キーワード)発破,発破パターン,ドリルジャンボ,マシンガイダンス,遠隔化

工業団地直下を小土かぶりで通過するⅡ期線トンネルの施工について -常磐自動車道 好間トンネル-
㈱フジタ 東北支店 好間トンネル作業所 現場代理人 小笠原 和久
(概要)好間トンネルは,常磐自動車道いわき中央 IC からいわき四倉 IC に位置する福島県いわき市内のトンネルで,供用中のⅠ期線トンネルに平行するⅡ期線トンネルであり,延長は L=1241m である.本トンネル上部の地表部はトンネル全延長の約 8 割が工業団地として造成されており,トンネル延長の約 3 割が土かぶり 2D(D:掘削幅)以下,約 7 割が 3D 以下となる小土かぶりの近接施工条件である.また,Ⅰ期線トンネルとⅡ期線トンネルの中心間距離は,地表部の利用条件からトンネル全線にわたり約 20m と近接している.本稿では,トンネル地表部の工業団地における計測計画と結果,近接しているトンネル間がさらに接近する非常駐車帯部での施工について報告する.
(キーワード)工業団地,精密機械工場,振動測定,小土かぶり,Ⅱ期線,非常駐車帯,超近接

斜坑を経由した 2 切羽同時施工トンネルのずり出し方式の見直しと低土かぶりでの重要構造物との交差
-北陸新幹線、加賀トンネル(中)他-
佐藤工業㈱ 北陸支店 加賀トンネル作業所 馬庭 宏光
(概要)北陸新幹線,加賀トンネル(中)他工事は,全長 5,460m の加賀トンネルの中間工区で,延長 334m の斜坑を経て,金沢方に 1,130m,敦賀方に 1,220m の両方を機械タイヤ方式で同時施工を行うものであった.また,JR 北陸本線,国道8号線,北陸自動車道といった重要構造物の直下を低土被りで交差した.施工期間中は,斜坑にベルトコンベヤーを設置することで,掘削ずり運搬車両同士または,アジテーター車を含む資材運搬車両との輻輳を回避し,各施工サイクルの低下を防止した.また,本工事では,JR 北陸本線,国道8号線,北陸自動車道といった重要構造物の直下を低土かぶりで交差するため,各管理者と協議のうえ,計測管理体制および緊急時体制の構築し,無事施工を終えることができた.
(キーワード)2切羽同時施工,重要構造物交差,低土かぶり

小土被りで脆弱な凝灰角礫岩地山における大断面トンネル施工
-東北中央自動車道 掛田トンネル工事-
青木あすなろ建設㈱ 建設技術本部土木エンジニアリング部 副部長 高橋 裕之
(概要)掛田トンネル工事は,相馬福島道路に計画されている延長 421m のトンネルを新設する工事で,掘削断面積約120m2,内空断面積約 90m2の大断面トンネルである.掘削方式は,自由断面掘削機による機械掘削方式の NATM トンネルである.地山は,凝灰角礫岩が主体だが地山強度比が1以下の区間が多く,スメクタイト(膨潤性粘土鉱物)を含有していることから,地山の膨張性やスレーキングが懸念されていた.そのため,各種の地質調査,補助工法の実施により地山の安定を図るとともに,覆工の耐荷力向上のため品質向上対策を実施した.また,坑口部では斜面崩壊,地すべりが発生したため,斜面安定対策を実施した.相馬福島道路全線の早期開通のため施工の効率化により,工程遅延を防止した.
(キーワード)地質調査,スメクタイト,切羽安定対策,覆工コンクリート,斜面安定対策,施工の効率化

Safety2.0(協調安全)の考え方に基づいた山岳トンネルの重機接触災害防止対策
-熊本 57 号滝室坂トンネル西新設工事-
清水建設㈱ 土木技術本部 地下空間統括部 トンネル設計グループ 星 州人
(概要)山岳トンネル工事では,限定された空間で人と重機が協働作業をするため,重機接触災害のリスクが高く,一度発生すると重篤災害に直結する.このリスク低減に向け,現場では人が重機に近づく場合のルールを定め安全教育により周知徹底を図っており,人の注意力に頼る場面が多いと言える.このため,ヒューマンエラー等に対応できず,依然として重機接触災害の根絶には至っていない.そこで,筆者らはトンネル坑内作業の重機接触災害防止のために,Safety2.0(IoT を用いた人と重機の協調安全)に基づいた重機接触災害リスク低減システムを開発し,山岳トンネルの現場へ導入した.また,同現場では,延伸ベルコンを活用し,本坑のみならず避難坑,インバート工の掘削ずりをベルコンに集約して運搬するシステムも併用し,更なる重機接触リスク低減を図った.これら重機接触防止対策の導効果が得られたので報告する.
(キーワード)山岳トンネル,Safety2.0,協調安全,ICT,重機接触災害防止対策

論文掲載のみ
不良地山区間における掘削および対策工について ―野田久慈道路 久慈長内トンネル―
宮川 俊介*1,山中 博登*2,阿部 勝博*3
(概要)野田久慈道路,久慈長内トンネル工事は,岩手県沿岸北部の久慈市に位置する延長 1445.3m の道路トンネルを新設する工事である.地質は,トンネル全長の中央付近に分布する境界断層を境に,起点側は礫岩主体の砂岩・礫岩・泥岩互層となる野田層群,終点側は砂岩を主体とする久慈層群である.また,起点側坑口部および最小 6m 程度の小土かぶり部において地すべり地形が確認されていた.さらに,終点側坑口部は崖錐堆積物層が 10m 程度堆積していた.本稿では,地すべり地形を有する小土かぶり区間,破砕帯を伴う境界断層区間,坑口部の崖錐堆積物区間における施工実績および対策工について報告する.
*1 ㈱大林組 名古屋本店 風越山シールドJV工事事務所 所長
*2 ㈱大林組 東北支店 宮城白石川橋JV工事事務所 主任
*3 国土交通省 東北地方整備局 三陸国道事務所 専門職