202203

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第90回施工体験発表会(山岳)CD-ROM
主題/副題
新技術・創意工夫により課題を解決した山岳トンネル新設・改修工事 - 生産性・安全性向上、働き方改革 -
発行所
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
2022年(令和4年)10月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

特別豪雪地帯での全線小土かぶり・未固結地山のトンネル施工
― 北海道新幹線,ニセコトンネル他 ―
飛島建設(株)札幌支店 新幹線ニセコトンネル作業所 工事主任 村岡 貢
(概要)北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)ニセコトンネルは,全線で小土かぶりであり,かつ火山灰質砂が主体の未固結地山のトンネルである.トンネル掘削時には掘削補助工として一次インバート,注入式長尺先受工並びに注入式長尺鏡ボルト工を併用して地山への影響を抑えながらのトンネル掘削を一度も中断することなく継続できた。これにより,本トンネルは掘削に約46か月を要し,令和4年4月に無事貫通を迎えることができた.本報では,特別豪雪地帯に位置した小土被り・未固結地山のトンネル施工において,生産性向上のために実施した各種対策とそれらの効果について報告する.
キーワード 豪雪地帯,含水未固結地山,多機能型防音ハウス,AGF工,路盤泥濘化,連続ベルトコンベア,坑内照明

真円形インバートにおける埋設型枠を活用した生産性向上の取組み
-一般国道40号 音威子府村 音中トンネル-
清水建設(株)九州支店 土木部 真幸トンネル作業所 副所長 浅海 綾一
(概要)一般国道40号音威子府村音中トンネルでは,脆弱な蛇紋岩区間の強大な地圧に対して,山岳トンネル史上,最大規模に相当する真円形3重支保工を構築することでトンネル建設を実現した.蛇紋岩区間では,トンネル変位・応力が長期間にわたって漸増する時間依存性挙動が認められたことから,覆工・インバートコンクリートは,厚さ500mmの複鉄筋構造として設計された.真円形状のインバート部は通常より曲率が小さく,施工性が著しく低下する.そこで,埋設型枠の活用とユニット化施工を実現することで生産性の向上に取組んだ.その結果,埋設型枠組立からコンクリート打設までの一連作業は専門技能者(型枠大工)を必要とせず,坑内夫にて効率的に施工することが可能となり,さらに施工延長415mに対して約2か月の工程短縮を実現し生産性向上(工程短縮,施工の省力化・効率化)に大きく寄与した.
キーワード 生産性向上,埋設型枠,山岳トンネル,インバート

地滑り対策としてトンネル坑口部55m延伸を採用した事例
― 平成30年度赤嶺トンネル(南側)工事 ―
西松建設(株)九州支社沖縄支店 赤嶺トンネル南出張所 係長 高永 光太郎
(概要)本論文は,沖縄県那覇市においてトンネル上り線487mと下り線490m,および最大切土高10m,最大切土勾配1:0.5の工事用道路を構築する工事について報告する.
工事用道路掘削開始直後,法面の小崩落が発生し,当初設計のモルタル吹付に鉄筋挿入工を追加し掘削を継続したが,掘削が中腹を過ぎたころ,上り線側面が崩落し,押え盛土による対応を余儀なくされた.上り線への動線が塞がれたため,下り線トンネル掘削を先行した直後,下り線側面も崩落した.下り線は押え盛土を縮小させトンネル掘削を継続したが,上下線ともに恒久的な法面対策が必要となった.本稿は、法面崩落対策としてトンネル坑口を55m延伸することに至った経緯と延伸によりもたらした効果について報告する.
キーワード 法面崩落,重金属含有土,トンネル坑口延伸

低土かぶり部の盛土施工箇所へのアプローチ方法
― 国道289号4号トンネル工事 ―
佐藤工業(株)北陸支店 八十里越4号トンネル作業所 現場代理人 上田 真佐志
(概要)国道289号は新潟県新潟市を起点とし,福島県いわき市に至る道路である.このうちの県境部分は八十里越と呼ばれ,その険しさから交通の難所とされてきた.現在は通行不能区間となっており,この解消のために昭和61年度より国土交通省の直轄権限代行で事業が進められている.当工事は,その中の4号トンネル(延長178m)のトンネル工事である.当トンネルは,到達側坑口から約50m手前に低土かぶり部があり,本坑掘削前に改良土による盛土を施工する必要があった.しかし,当該箇所への明り部からのアクセス道路が設置不可能であったため,低土かぶり部を導坑先進掘削工法(機械掘削NATM工法)で通過し,導坑を盛土材搬入路として使用した.本報告は,低土かぶり部通過で実施した底設導坑の設計・施工実績について述べるものである.
キーワード NATM,低土かぶり,導坑先進工法

近接施工・偏土圧地形条件下の山岳トンネルの施工
― 県道砂原四方寄線1号トンネル ―
(株)竹中土木 九州支店 竹中・吉永・凰・杉本特定建設工事共同企業体 山本 隆士
(概要)県道砂原四方寄線1号トンネルは,熊本市南区砂原から北区四方寄を結ぶ池上IC~花園IC間に位置する延長872m,掘削断面積約70m2,上り勾配3%の山岳トンネル(NATM)である.本トンネルの起点側(掘削発進側)坑口から16m~34mの区間の直上に,過年度に施工された補強土壁が交差角度約30度で存在し,トンネル本体および地山への影響が懸念された.本稿では,この懸念事項に対する坑口付近の安定検討,および対策の報告に加え,近年,必要性の高まる生産性向上に関する取り組みを併せて報告する.
キーワード 近接施工,偏土圧,小土かぶり,補強土壁,ユニット鉄筋,AGF-TK,PicoCELA

既設避難連絡坑の断面拡幅による供用中トンネルへの接続
― 阪和自動車道 青垣内山トンネル ―
鉄建建設(株)大阪支店 谷川作業所 工事係長 越智 康博
(概要)青垣内山トンネル工事は,暫定2車線で運用されていた高速道路を完成4車線にするトンネル新設工事であり,新設トンネルから供用中トンネルへ接続する延長30.3mの避難連絡坑の施工も行った.避難連絡坑は,Ⅰ期線工事において人道用断面で延長10.0m(うち覆工施工済み4.9m)が掘削されていたが,Ⅱ期線の設計段階で緊急避難時の安全性向上を踏まえ,車道用断面へ拡幅することになった.供用中トンネルに既設避難連絡坑の断面を拡幅して接続することから,供用線の通行車両の安全確保と供用中トンネルへの影響を最小限に抑える必要があった.そのため,事前調査および数値解析による影響検討を行うとともに,断面拡幅時の供用中トンネルへの影響を計測しながら施工を行った.供用線側の作業は,夜間通行止めの限られた時間内での作業という制約がある中,各施工段階の工夫により,供用中トンネルに支障をきたすことなく,無事に避難連絡坑を接続することができた.
キーワード 避難連絡坑,レーザースキャナ,3次元FEM解析,振動速度,コアボーリング

山岳トンネル工事における時短の取組み
― 能越道 鷹ノ巣山2号トンネル ―
鹿島建設(株) 北陸支店 能越道鷹ノ巣山2号トンネルJV工事事務所 工事係 村上 蓮
(概要)石川県輪島市で施工した長さ951mの山岳トンネル工事において,積極的に生産性向上と業務の改善を行った結果, 2024年から施行予定の時間外上限規制(特別条項)に対して,工事事務所の従業員全員がこれを満足することができた.時間外上限規制(特別条項)注)に対して,2019年度は5人中2人が未達,2020年度は7人全員が達成,2021年度は7人全員が達成かつすべての月で45時間以下であった.昼夜施工という条件下での山岳トンネル工事の時短に向けた創意工夫とその成果について述べる.
注)労働基準法の改正に伴う時間外労働の上限規定で,45時間/月以下かつ360時間/年以下とされる.また,臨時特別な事情がある場合における特別条項の規定もある.
キーワード 山岳トンネル,昼夜施工,生産性向上,時間外上限規制,4週8閉所

週休2日制を適用した山岳トンネルにおける工程短縮事例 
― 安芸バイパス久井原トンネル工事 ―
(株)大林組 広島支店 久井原トンネル工事事務所 工事長 谷口 智洋
(概要)久井原トンネルは,国道2号の慢性的な渋滞緩和,緊急時の迂回路整備を目的とする安芸バイパスの暫定2車線道路トンネルである.本トンネルは,トンネルルートの一部区間が,産業廃棄物で埋め立てられた瀬野川公園の直下を小土かぶりで掘削するルートとなっていたため,事前の計画・設計段階において,高濃度の塩分を含む地下水がトンネル内に浸出することで,長期的な支保機能が担保できなくなることが予測され,トンネル全線の約8割の区間が特殊支保構造で設計されていた.さらに,インバート工はトンネル全線で設置が計画されていた.このような設計条件の中,インバート工を含む,トンネル施工をいかに効率的に手戻りなく確実に施工することが,工程遵守の大きな課題であった.また,発注者指定型の週休2日試行対象工事であること,さらに,30か月の必要工程に対し,供用開始が控えていたため,26か月で工事完成させる工程短縮策が必要となった.
キーワード 2スパン型インバート桟橋,FILM工,ラチスガーター,工程短縮

覆工コンクリート施工をICTで可視化
― 三遠道路2号トンネル工事 ―
清水建設(株)名古屋支店 三遠道路2号トンネル作業所工事長 田中 頼之
(概要)上半3心円道路トンネルの覆工コンクリートにスランプフロー35cm~50cmの流動性の高いコンクリートを採用した.これをマニピュレータ方式配管切替え装置と吹上げ方式打込み装置で移動型枠内に打込み,型枠バイブレータで打込み高さごとに集中管理するパターン締固めICT施工の現場流動覆工コンクリート自動施工システムを採用した.この自動施工システムは,人力作業を機械化し,各種センサで施工状況と締固め状態を数値で可視化,監視でき,PCシステムで打込み装置と締固め装置を自動制御するものであり,施工むらや品質のばらつきをなくし,高品質,密充填覆工を確実にする.本報では,このPCシステムの現場流動覆工コンクリート自動施工システムの適用性と有効性を報告する.
キーワード 覆工コンクリート,ICT,自動施工システム,流動化コンクリート,省人化

デジタルツールを用いた安全対策と突発大量高濁度湧水対策
― 国道493号(北川道路)道路改築(和田トンネル)工事 ―
三井住友建設(株)土木本部 土木技術部 トンネルグループ 次長 仲 哲路
(概要)一般国道493号北川道路は,徳島県阿南市から高知県安芸市に至る阿南安芸自動車道(延長110km)のうち,高知県北川村に位置する全長13kmの地域高規格道路である.本道路は安全で安心な信頼性の高い道路を確保することで高知東部地域の広域交通ネットワークの形成を図り,災害の起こりやすい現国道55号線等の迂回路を確保してリダンダンシーの向上を図ることを目的とした事業である(図-1).和田トンネルは,このうち全長2,230mの道路トンネルであり,当工事は起点側工区1,416mを掘削する.我が国は少子高齢化社会を迎え,建設業においても「熟練技術者・技能者の不足」「働き方改革への対応」が喫緊の課題となっているが,当工事においては,この課題解決策として,デジタルツールを積極的に活用し,現場管理の生産性向上を図った.
本稿は,当工事において実施した各種デジタルツールを用いた安全対策と,砂岩泥岩混在区間における突発大量高濁度湧水対策の施工事例を報告するものである.
キーワード トンネルDX,デジタルツール,生産性向上,四万十帯,突発大量高濁度湧水

温室効果ガス排出を抑制したトンネル施工の工夫
― 新名神高速道路 宇治田原トンネル東工事 ―
戸田建設(株)大阪支店 宇治田原トンネル東作業所 杉谷 悠行
(概要) 山岳トンネル工事は,重機稼働による排気ガスに加え,トンネル坑内の換気設備や照明設備に用いる電力など,他の工種に比べ排出される温室効果ガスが多い.最新技術を駆使し長期耐久性を向上させるトンネル施工を行うと同時に,次世代の地球環境を守るため省エネルギーで環境にやさしい施工が求められている.本稿では山岳トンネルの工事現場から排出される温室効果ガスを抑制する工夫の一例として,軽油の代替燃料である「BDF100」や「GTL」,再生可能エネルギーで発電された電力「RE100」の導入の取組みについて報告する.
キーワード 山岳トンネル,温室効果ガス,省エネルギー,BDF100,GTL,RE100

押出し性地山を伴う長大水路トンネルの施工および生産性向上の取り組み
― 水海川導水トンネル2期工事 ―
(株)安藤・間 大阪支店 水海川トンネル作業所 工事主任 中西 大介
(概要)水海川導水トンネルは,4,717 m,仕上がり内径8.5 mの円形の長大水路トンネルである.円形断面のためタイヤ方式で施工するトンネルとしては狭小で,かつ,超長距離片押し施工の難易度の高いトンネルとなる.さらに,地質も脆弱で,途中,安山岩の自破砕部が出現し,トンネルの安定性を確保するのが困難なほどの押出しが発生した.
本稿では押出し性地山対策を述べるとともに,狭小,長距離トンネルを効率的に掘削するために実施している生産性向上施策について報告する.
キーワード 押出し性地山,自破砕状溶岩,トンネル変状,情報化施工,生産性向上,DX

大土被り泥岩地山における長尺先進ボーリングによる設計支保パターンの合理化
― 朝日温海道路11号トンネル工事 ―
大成建設(株)北信越支店 朝日温海11号トンネル作業所 福井 隆介
 (概要)本報は,朝日温海道路11号トンネル工事において実施した,長尺先進ボーリングによる大土被り泥岩地山における設計支保パターンの合理化について紹介するものである.工事発注段階の設計において,大土被り泥岩区間(TD=550~905m)では,二次元FEM解析を用いた解析に基づき,早期閉合や二重支保工パターンが決定されていた.しかしながら当該区間の解析に用いられた物性値は,約600m離れている場所における鉛直ボーリングの表層近くの岩石試験結果に基づき決定されていた.そのため,当現場では不良地山とされている当該区間の性状を直接調査により事前に把握する必要があると考え,長尺先進ボーリングを実施し,採取したコアを用いた試験結果に基づき,三次元FEM解析を実施し,合理的な施工支保パターンの決定を実施した.
キーワード 長尺先進ボーリング,シールドリバース工法,三次元FEM解析