202503
目次:掲載頁/演題/発表者/所属
1.長距離・特殊岩盤シールドにおける施工報告について
― 奥畑-妙法寺連絡管整備工事(その1) ―
西松建設(株) 西日本支社神戸西シールド出張所 副所長(現 なにわ筋線工事事務所 課長)内山 明日香
(概要)本工事は,相互融通機能を有した全長約3.7kmの水道連絡管を泥水式シールド工法にて新設する工事である.掘削対象地盤は,神戸層群の泥岩を主体とする互層岩盤と花崗岩の全線岩盤である.神戸層群岩盤は,水が混ざると高粘性化すること,花崗岩は,石英を含み研磨効果が高い特徴がある.さらに,当工事は長距離岩盤掘進であることから,ビットの異常摩耗や損傷による掘進不能や特殊岩盤層による掘進低下が課題であった.本稿では,掘削体積比エネルギーを用いた綿密なビット交換計画と施工実績について報告する.また,特殊岩盤での掘進低下対策についても報告する.
キーワード シールド,長距離,岩盤,掘削体積比エネルギー,ビット交換
2.多数の橋梁直下を通過する地下河川シールド工事について
― 柳生川シールド工事 ―
(株)大林組 名古屋支店 柳生川シールド工事事務所 主任 栗田 輝和
(概要)本工事は,愛知県豊橋市内を流れる二級河川柳生川周辺の浸水対策としてシールドトンネルにより地下河川を構築する工事である.河川を埋戻した人工地盤に発進立坑を構築し,到達まで河川直下を縦断して掘進するシールド工事である.シールド路線の途中には,河川を横断する鉄道橋・道路橋が多数存在し,到達立坑に近接して幹線下水函渠がある.これらの重要構造物への影響を抑え,安全かつ確実性の高い施工方法の検討が求められた.本稿では,河川直下を縦断掘進するシールド工事において,シールド発進時の施工対策,複数の橋梁横断を伴う近接施工時の対策,安全なシールド到達のための対策とそれらの施工結果について報告する.
キーワード シールド工,河川下,鉄道橋通過,地中到達,直接切削,週休二日制度
3.大礫が多発する洪積砂礫層でのカッタービットとスクリューコンベヤーの損傷について
― 浪速枝管(その5)1500mm配水管布設工事―
佐藤工業(株) 大阪支店 浪速シールド作業所 現場機電担当 中田 隆斗
(概要)本工事は,大阪市北区中津2丁目に発進立坑を設け,西天満4丁目までを泥土圧シールド工法で内径φ2,144㎜のトンネルを,また,同じ発進立坑より豊崎7丁目までを泥濃式推進工法で内径φ2,000㎜のトンネルを築造して,その内部にφ1,500㎜の鋼管及び鋳鉄の水道管約3,600mを布設し,既設水道管との連絡を行う工事である.シールド路線は路線延長が3,337.48mあり,路線内に急曲線区間(R=20m×1箇所,R=42×3箇所,R=47×2箇所,R=50×2箇所)がある.また,大阪市内の支持地盤である天満層の下を通過する最大土被りが34mの大深度トンネルである.土質については発進立坑付近では洪積粘性土層から洪積砂礫層に移り,到達立坑の約400m手前で沖積砂質土層となる.また,シールドマシンの損傷や摩耗により,マシン入替のため中間立坑を設け,到達に向け再発進する工事である.
キーワード シールドマシン,カッタービット,スクリューコンベヤー
4.φ6,250mm泥土圧シールドによる長距離・急曲線 施工実績
― 谷沢川分水路工事 ―
(株)安藤・間 首都圏土木支店 土木部 小野路出張所 所長 伊藤 寛基
(概要)谷沢川分水路工事は,泥土圧シールド工法により国道246号・環状8号線・世田谷区道直下に全長3.2kmの河川分水路を築造する工事である.本工事の路線は,曲線部施工が10箇所計画されており,
その内,R=20mと30mの急曲線施工が7箇所(発進部付近:4か所、到達部付近:3箇所)計画されている.一方,掘進対象土質は,泥岩層・粘性土層・砂礫層などの互層であり,また,到達立坑仮壁直接切削(NOMST)および急曲線施工直後での到達掘進であるとともに,厳正な排土率を確保するために十分な事前検討が必要であった.本稿では,これらの課題を克服するための対策および実績について報告する.
キーワード 長距離掘進,急曲線施工,長距離土砂圧送,高精度到達掘進
5.観光地と住宅地直下における都市部山岳工法トンネルでの取組み
― みなとみらい21線車両留置場建設工事(土木工事) ―
鹿島建設(株) 横浜支店 MM線車両留置場JV工事事務所 工事主任 増田 開
(概要)本工事は,神奈川県横浜市の観光地直下に,地下鉄の車両留置場を都市部山岳工法トンネルにより建設する工事である.車両留置場は,単線断面,複線断面,併設断面の3つの断面形状で構成される.「技術提案の審査及び価格等の交渉による方式(通称,技術提案・交渉方式)」のうち,「技術協力・施工タイプ:ECI方式」を参考に発注され,トンネル掘削支保工や仮設備などの仮設設計は,施工者で行う方式が取られた.技術協力業務での発注者からの要望として,工期・工費を最小化すること,工事の占用用地を極力小さくすることが求められた.また施工者としては,工事場所に超近接する住宅地やトンネル直上の観光地に対する環境対策を行う必要があった.その中で車両留置場にアクセスするための工事用連絡道やトンネル構造の変更,仮設備配置計画,周辺環境対策などの取組みを実施したので報告する.
キーワード ECI方式,都市部山岳トンネル,施工計画,狭隘な工事ヤード,周辺環境対策
6.都心部における超長距離・大深度シールド施工
― 千代田幹線工事,千代田幹線その2工事 ―
(株)奥村組 東日本支社 東京土木第1部石岡シールド工事所 工事主任 柿永 恭佑
(概要)東京都下水道局発注の千代田幹線工事は,老朽化した芝浦処理区の主要6幹線の水位を低下させ,既設幹線の再構築工事を可能にすることを目的に,仕上り内径φ4,900㎜,全長約8.7㎞の下水道管きょを泥水式シールド工法により築造するものである.工事の路線は,起点が千代田区飯田橋であり,途中で主要6幹線から流入させ,終点の港区港南の芝浦水再生センターへ流下させる計画である.施工にあたり,掘進区間に存在する地下鉄や下水幹線等の地下埋設物を避けるため,深さ約60mの大深度での施工が必要である.特に東京都心部を縦断するため,中間に立坑が設置できず,1スパンの下水道シールドとしては日本最長となる.加えて,狭隘な発進基地における設備配置計画という課題がある.本報告では,これらの施工条件・課題に対するシールド計画や掘進設備の工夫を行い,安全に施工が完了したため,その内容を報告するものである.
キーワード シールド,大深度,超長距離,都市部縦断
7.既設構造物に近接した大深度立坑掘削の施工実績
― 東京外環自動車道 京葉ジャンクションBランプ工事 ―
鹿島建設(株) 東京土木支店 外環京葉BランプJV工事事務所 工事課長代理 岩上 進也
(概要)
本工事は,東京外環自動車道京葉ジャンクションにて,未整備である東京外環自動車道高谷方面から京葉道路千葉方面へ接続するランプウェイを,シールド工法(延長646m)で施工する工事である.本工事の発進立坑は,供用中の東京外環自動車道ランプ躯体に合築する形状である(図-1, 図-2) .そのため,土留構造は新設土留だけで閉合することが出来ず,既設土留や既設躯体,地盤改良等を利用した構造とする必要があった.また,既工事で構築された躯体や埋戻し材等があり,掘削段階においても様々な施工上の工夫が求められる工事であった.本報文では,立坑掘削時に発生した既設躯体下部からの出水とその対応事例と既設躯体に接続されていた埋戻しコンクリートの撤去方法について報告する.
キーワード 大深度立坑掘削,既設構造物近接施工,緊急止水,薬液注入工,構造物撤去
8.都市部幹線道路下における4D-SIMを用いた部分プレキャストボックスカルバートによる地下車路・地下歩道の構築
― R2国道246号渋谷駅周辺地下道工事 ―
東急建設(株) 東日本土木支店 土木部 技術員 浅井 祐人
(概要)本工事は,国道246号渋谷駅西口および東口において,歩行者の利便性向上や道路交通の円滑化のため地下車路および地下歩道を開削工法で構築する工事である.そのうち,西口地下道における地下車路部分は,隣接再開発事業の竣工時期を考慮し,早期の躯体構築の完成が必要であった.また,都市部の夜間道路工事特有の道路規制調整,地下から上空に至るまでの近接構造物など,厳しい制約条件での施工や,多数の関係機関との協議などをスムーズに進めることが課題となった.そこで,工程短縮を図るため,部分プレキャスト部材を用いた大型ボックスカルバートの構築工法を採用するとともに,施工計画の深度化,関係者間の意思疎通を図ることを目的に,4Dシミュレーション,VR技術を用いた施工計画の立案を行った.本稿では,本工事の西口地下道で実施した部分プレキャスト部材を用いた大型ボックスカルバートの施工事例と4Dシミュレーション,VR技術の活用事例について報告する.
キーワード 生産性向上,都市部,地下道,開削工法,部分プレキャスト,大型ボックスカルバート,4Dシミュレーション,VR技術
9.トンネル長寿命化のための補強・補修工事の施工実例
― 東京メトロ千代田線北千住駅・町屋駅間B線シールドトンネル補強・補修工事 ―
東京地下鉄(株) 鉄道本部 工務部 土木課 主任 多田隈陽介
(概要)本工事は,千代田線北千住駅・町屋駅間B線シールドトンネルにおいて,トンネルの長寿命化に向けた二次覆工による補強対策と,漏水の抑制,継手ボルトおよび鉄筋の発錆抑制による補修対策を実施するものである.当該トンネルは営業中の鉄道トンネルであるため,作業時間,作業空間,材料搬入ルートなどで様々な制約を受ける.一般に営業中の鉄道トンネルでは,作業時間は夜間の列車運行停止時間帯に限られ,二次覆工などの対策工も建築限界外の空間に限られる.材料などの搬入ルートも限定され,トンネル内での資機材の仮置きも困難な場合が多い.このように限られた時間・空間で効率的な施工を実施するためには,現場に配慮した工夫が必要である.本稿では,二次覆工による補強対策における高所作業車の導入,打設時に使用するプラントの仕様変更など,施工方法の効率化および施工環境の改善に取り組んだので,その内容について報告する.
キーワード シールドトンネル,トンネル変形,二次覆工,制約条件,高所作業車 打設プラント
