92004
まえがきより近年の都市、一都市周辺の地下の高度利用は、目覚ましく、新設するトンネルが地上の各種既設構造物と近接あるいは、鉄道、道路、水路等トンネルと近接、交差を伴う施工が避けられない情勢となっている。また、地方部においても同様の事例が増加している。これは、我が国の国土面積の約7割が山地によって占められ、かつ変化に富む地形、地質に伴う限定された土地利用に起因するものである。21世紀に向け産業及び交通体系の充実、拡大が図られて行くことは、確実であり、これによって生じるトンネルと多岐にわたる各種構造物との近接施工に関する安全性の確保を初めとする諸問題は、ますます重要になるものと思われる。日本道路公団では、これらを踏まえ昭和62、63年度に渡って(社)日本トンネル技術協会に委託し『構造物に近接したトンネルの設計施工に関する調査研究』を実施した。本書は、この委託研究報告書を基に一部加筆修正を加え山岳トンネル工法による地下空洞の施工によって生ずる既設構造物との近接の問題点の捉え方と事前調査、影響予測、並びにその対策工等について取りまとめたものである。地下開発分野の技術の進歩は目覚ましく新しい技術、工法が日進月歩のごとく考え出されている。近接施工への取組に際しては、常に新しい技術に積極的に対応しかつ安全性を重視する姿勢を持つことに留意しなければならない。これらのことを踏まえ本書がトンネル工事に従事する技術者、関係者にとって現場での施工のみならず計画、調査及び設計を進める各段階においても身近な手引き、解説書となり広く利用されることとなれば幸いである。
第1章 総論1-1 研究の日的1-2 適用範囲1-2-1新設構造物の位置関係,1-2-2関連基準・指針
第2章 近凄工事の分類、問題点
2-1 概説2-1-1 トンネル掘削が周辺地山におよぼす影響,2-1-2 既設構造物に対する影響因子2-2 近接工事の分類,2-2-1 トンネル施工によって既設構造物に生じる現象,2-2-2 トンネル工事の分類,2-2-3既設構造物との位置関係による分類と影響の特徴2-3近接工事における地山挙動と着目点,2-3-1 地形的要因,2-3-2 地質的要因,2-3-3 地下水,2-3-4 既設構造物の構造的要因,2-3-5 既設構造物の機能,2-3-6 新設トンネルの掘削断面、設計・施工法
第3章 事前調査
3-1 概説3-2 地盤条件の調査,3-2-1 調査項目,3-2-2 調査範囲,3-2-3 地下水調査3-3 既設構造物の調査,3-3-1 調査対象構造物の種類,3-3-2 調査内容,3-3-3 調査方法,3-3-4 環境調査
第4章 影響予測
4-1 概説4-2 影響予測方法,4-2-1 変形による影響予測,4-2-2 地下水の低下に伴う地表面沈下予測4-3 許容値,4-3-1 許容値の設定,4-3-2 基準類および基準値
第5章 対策工法
5-1 概説5-2 対策工の選定,5-2-1 対策工法の種類,5-2-2 近接区間の規模による対応,5-2-3 対策工の組合せによる対応,5-2-4 対策工選定時の留意事項5-3 代表的な対策工の概要と施工例,5-3-1 トンネルの施工法による施工例,5-3-2 中間地盤の対策,5-3-3 対策施工例一覧表
第6章 監視・計測
6-1概説6-2 計測計画の事例,6-2-1重要構造物直下におけるトンネル掘削を行った例(タイプA) ,6-2-2既設トンネルの上方でトンネル掘削を行った例(タイプI)6-3 計測管理
第7章 爆破振動
7-1概説7-2 爆破振動の特徴7-3 爆破振動の予測7-4 爆破振動の影響7-5 爆破振動の管理7-6 爆破振動の軽減対策7-7 具体的な対策事例