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区分
シンポジウムテキスト
図書分類
シンポジウム
図書名/雑誌名
第1回トンネル技術シンポジウム
主題/副題
/NATMにおけるロックボルト工
発行所
社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
1980年(昭和55年)11月10日
頒布価格 (個人・税込)
0円
総頁数
100
体 裁
A4サイズ
内容

はじめによりトンネル工事は,地上の土木工事と異なって目だたないが,地下においても技術の進歩は着々と進んでいる。特に岩盤力学の発展に刺激されてトンネル工学における技術の変革はむしろ急激であるといえよう。我が国のトンネル工事に鋼アーチ支保工が実用されはじめて未だ30年に満たないが,今日ではこれに加えてロックボルト工や吹付けコンクリート工が支保構造物として多用されるようになったのはその良い例であろう。
鋼アーチ支保工は,地山荷重を掘削したトンネルの内側から支持し, これにつり合う反力を底板によって受ける構造であり,考え方は明かりの構造物と同じである。しかし, ロックボルト工や吹付けコンクリート工には明確な支点が存在せず,地山荷重を地山自体の強度で支持する点,地山の支保機構について鋼アーチ支保工とは考え方が本質的に異なっている。
NATMはロックボルトと吹付けコンクリートとを主なる支保材とし,掘削順序を考慮しながら地山が本来有する強度を利用して支保構造を形成し,施工するトンネル工法であり,施工に当っては特にトンネルの安定が地山の変位に関係することに着目し,計測を施工の補助手段として併用している。
このような認識は全く新らしいものであるだけにNATMに対する見解は様々で,国内はもとよりヨーロッパにおいても末だ盛んに論議されているのが現状である。しかし,NATMの合理性については等しく認めるところであり,そのトンネル工学-の寄与には期待することができる。
ロックボルト工はNATMを構成する主体的要素であるが,作用効果を始めとしてロックボルト工の技術的評価について末だ不明なところが残っている。ロックボルト工に関する知見は経験によってはぐくまれてきたものが多いが,解析的研究や実験。実測による実証的研究によって経験から脱却するきざしを認めることができるようになった。蓄積したこれらの諸成果をふまえて行う討議は,技術の集約と発展に重要な役割をもっと考える。ここに斯界の技術者によってシンポジウムを開催し,NATMにおけるロックボルト工について意見を交換することは,現状の認識から将来への展望を開く糧として役立つであろう。これが契機となり,一層発展の基礎が固まるよう切望する。
シンポジウムは2部門に分けて開催する。第1部門は設計,第2部門は施工とし,それぞれ資料を添えて説明と問題提起を行い,集中的に討議ができるよう企画している。
設計部門においてはロックボルトの作用効果, トンネルの支保構造に関するロックボルト工の理論解析と数値解析の手法およびロックボルトをめぐる設計上の問題点の3テーマを取上げ,資料を作成している。このうちロックボルトの作用効果については, これに関する既出の見解を列挙して説明し,作用効果に対する見解をまとめる手がかりとしている。ロックボルト工による支保構造の理論解析法については,入手した既報の研究について概要を並列的に説明し,理論構成の基礎を明らかにする参考としている。また数値解析法については, FEMによる解析を対象としてロックボルトの表現手法と入力物性値の取扱い方について既報の研究をまとめ,説明資料としている。FEMによる解析法は,トンネルの掘削順序を考慮しながら構造解析ができ,解析手段として有力である。ロックボルトをめぐる設計上の問題点については,現在ロックボルトの詳細設計に関連して議論がある諸問題を列挙し,問題提起の資料としている。
施工部門においてはロックボルトの施工と問題点をテーマとし,3トンネルを施工例として説明資料を作成し,話題を提供するとともにそれぞれのトンネルがロックボルト工に関してかかえている施工技術,施工機械および施工管理の問題について問題提起することにしている。施工例としては膨張性地山に対する場合として国鉄篠ノ井線第一白坂トンネルを,土被りの少ない末固結の土砂地山に対する場合として鹿島線大貫トンネルを, また堅岩に対する場合の代表として関越自動車道関越トンネルを取り上げている。これら3トンネルは, ロックボルトの施工に関する問題点を包括するものと思われ,討論を通じ施工技術の向上を図りたいと考えている。

目 次

はじめに
第1回シンポジウム実行委員会の構成I.設計部門1. ロックボルトの作用効果
1.概要
2.力学的不連続面の補強
1) 吊り下げ効果、2) 梁形成効果、3) 補強効果
3. 連続体としての地山の補強
1) 自己つり合い効果、2) 地山強度改善効果2. ロックボルトの解析手法
1. 概説
2. 理論解析手法
1) 極限つり合い理論、2) ボルトによる見掛けの粘着力の増加効果、3) ボルトの円形支持リンクを考慮した弾塑性解析、4) アーチのつり合い理論、5) 多ヒンジアーチ理論
3. 数値解析手法
1) 掘削解析の概要、2) 変形の応力依存性ね3) 入力物性値とその決定法、4) ロックボルトの表現手法、5) 異方性,ブロックモデル等
4. まとめ3. その他,ロックボルト工設計上の諸問題
1. ロックボルト材の許容応力
2. 設計パターン
3. 計測結果から見た設計パターンの問題点
1) ロックボルト軸力の実態、2) 設計パターンの問題点、3) 計測上の問題点と今後の計測のあり方
4. 地山の性質とロックボルトの種疑、1) 地山の性質と定着方式、2) ロックボルトの材質と腐食、3) その他の問題点
5. 斜めロックボルト
6. ロックボルトの施工時期
7. ベアリングプレートⅡ. 施工部門4.篠ノ井線第一白坂トンネルにおけるロックボルトの施工と問題点
1. 地質条件、2. 掘さく、1) 掘さく断面、2) 掘さく方法、3. ロックボルト、1) ロックボルトの種額、2) ロックボルト長、3) ロックボルトの定着長、4) ロックボルトの締付方法、5) 穿孔機械、6) ロックボルト打込機械、7) ロックボルトの施工時期、8) ロックボルト工のサイクルタイム、9) 肌落防止工、10) 湧水対策、ll) 施工管理、12) 計測、4. 施工上の問題点、1) 穿孔機械、2) クラウン部の長尺ロックボルトね3) ロックボルトの汎用性ね4) 計測とパターン、5) ロックボルトの形状、6) モルタルの品質管理、7) モルタル注入、8) ロックボルトの配置と作用効果5. 鹿島線大貫トンネルにおけるロックボルトの施工と問題点
1. 鹿島線の概要および地質概要、2. 施工断面、3. 掘削方法、4. ロックボルト、1) 穿孔方法の決定、2) ロックボルトの引抜試験、3) ロックボルトの締付方法、4) ロックボルトの施工時期、5) ロックボルト工のサイクルタイム、5. 肌落防止工、6. 湧水対策、7. ロックボルトの施工管理、8. ロックボルトの計測結果、9. ロックボルトの施工上の問題点、1) 穿孔方法、2) モルタルの充頃、3) モルタル圧入式ロックボルトの試験概要、10. おわりに6. 関越自動車道,関越トンネルにおけるロックボルトの施工と問題点
1. 地質条件、2. 断面積、3. 掘削方法、4. ロックボルト、1) ロックボルトの種類、2) ロックボルト長、3) ロックボルトの定着長、4) ロックボルトの締め付け方法、5) 穿孔機械、6) ロックボルトの打込み機械、7) ロックボルトの施工時期、8) ロックボルト工のサイクルタイム、5. 肌落ち防止工、6. 湧水対策、7. ロックボルト孔の施工管理、8. 計測、9. 施工上の問題点
あとがき