201502
目次:掲載頁/演題/発表者/所属
P1-80都市部における超近接無導坑メガネトンネルの施工 -国道176号 名塩八幡トンネル-
山田 浩幸/㈱鴻池組大阪本店名塩道路八幡トンネル工事所長
(概要)西宮市から宝塚市へ至る国道176号の改良工事のうち、名塩道路八幡トンネル工事は、先行して整備を進める第1工区(L=1.4km)のうち、西宮市名塩南之町から東之町に至る延長L=242mの山岳トンネル工事であり、用地の制約条件から超近接無導坑メガネトンネルの構造で計画されていた。施工では、都市部での施工ということもあり、周辺環境の保全と安全管理を確実に実施する目的から最新技術の導入を行った。
本論文では、八幡トンネル工事で適用した新技術の紹介と現場適用における効果の検証結果について述べる。
キーワード:山岳トンネル,近接施工,安全管理,メガネトンネル,新技術
P9-16
小土被り未固結砂礫土層を上下線近接で掘る -新名神高速道路 神峰山トンネル-
勝田 つかさ/大成建設㈱工事主任
(概要)新名神高速道路 神峰山トンネルは,大阪府高槻市に位置する延長約300m,大部分が土被り2D以下の地下水を有する未固結砂質土層であり,かつ上下線が近接するという厳しい施工条件のトンネルである.掘削に伴う緩みにより周辺地山が塑性化しやすく,切羽の安定性確保と上下線近接による先進坑と後進坑の相互影響が課題となった.一方,東側坑口付近に分布している超丹波帯は,既往の調査で想定されたよりも地山が硬く機械掘削が困難となった.東側坑口付近には土被り約4mで参道が横断しており,閑静な地域で,民家が点在しているという施工条件から,地表面への影響と周辺環境への影響をいかに抑制するかが課題であった.これらの課題に対し実施した予測解析に基づく工法選定および施工中の対策について報告する.
キーワード:未固結砂礫土層,小土被り,上下線近接,制御発破
P17-24
日本一のトンネル坑内環境への挑戦 -新名神高速道路 箕面トンネル東工事-
近藤 正隆/大成建設㈱関西支店新名神高速道路箕面トンネル東工事作業所工事課長
(概要)当現場は防水型トンネルを一部区間含んだ延長2.1km、上下線合わせて4.2kmの大規模なトンネルである。このため、坑内環境を整えることが安全・品質等の根幹となるという信念のもと、現場を進めてきた。それは、作業着が汚れると仕事が雑になるが、坑内をきれいにすれば気持ちよく仕事ができ、モチベーションを上げることにもつながるという考えからである。このため、トンネル現場というと切羽での環境というイメージが先行するが、切羽での環境改善はもとより、坑内全体での環境改善を目標に様々な工夫を行っている。その結果、坑内環境が特に優れたトンネルが出来上がり、安全面・品質面においても高評価を得ることができた。本報告では、当現場で行った坑内環境を整えるための工夫とその結果を報告する。
キーワード:作業環境、坑内排水、換気設備、連続ベルトコンベア、安全性向上、イメージアップ
P25-32
高性能自在制御発破工法による住宅地の環境影響低減に関する考察 -新名神高速道路 箕面トンネル西工事-
北村 義宣/鹿島建設㈱ 箕面トンネル西工事事務所 工事課長
(概要)箕面トンネル西工事では坑口と住宅地との距離が短いため、発破に伴う振動や騒音が近隣住民に不安感を抱かせ、睡眠を妨害する等の影響を与えることが工事開始前より懸念された。従来の制御発破技術を用いても住環境に与える影響が大きいと予想されたため、本工事では起爆秒時間隔を現場で任意に設定することが可能で、かつ高い秒時精度で発破を制御できる電子雷管(eDeV?Ⅱ)を用いた高性能自在制御発破工法を国内の道路トンネルに初めて適用し、住環境に配慮しながら掘削を進めている。高性能自在制御発破工法を用いた発破時に住宅地内で振動や騒音を計測した結果、起爆秒時間隔を適切に制御することで地盤振動や低周波音を効果的に低減できるだけでなく、近隣家屋における建具のがたつきも抑制できることが分かったので、本報告ではこれらの結果を報告する。
キーワード 制御発破、電子雷管、秒時間隔、地盤の変位速度、低周波音、建具のがたつき
P33-40
硬質地山を機械工法で効率的に掘削 -国道11号白鳥バイパス 前山トンネル工事-
藤原 良二/㈱奥村組四国支店前山トンネル工事所所長
(概要)前山トンネルは、全線機械掘削の道路トンネルである。地質は、中~粗粒花崗岩が主体で地山区分は中硬岩以上の硬質地山が全体の約60%を占める。当初は、地山強度が50MPa以下の軟岩が主体と想定され、坑口付近の民家やトンネル上部の団地に対する振動、騒音対策も考慮し、機械掘削方式で計画された。施工では240kW級の自由断面掘削機で掘削を開始したが、坑口より220m付近から地山強度が50MPa~100MPaを超える硬さの地山に遭遇し掘削が困難となった。そこで発注者と協議しながら以下の対策工法を採用した。①強度が50MPaを超える地山には330kW級の自由断面掘削機と3t級大型ブレーカを導入、②強度が80~100MPaを超える地山には、330kW級自由断面掘削機、スロット芯抜き、蒸気圧破砕剤によるゆるめ破砕、4t級大型ブレーカを組合せた割岩工法併用掘削、③切羽前方地質を把握するため長尺水平ボーリング等を実施した。その結果、硬質地山を低騒音、低振動下で効率的に掘削することができた。
キーワード:硬質地山、大型掘削機、割岩工法、切羽前方探査、騒音・振動、低土被り
p41-49
造成盛土地盤における低土被りトンネルの施工 -和歌山市 中平井線トンネル-
香川 裕司/竹中土木・久本組・三笠建設特定建設工事共同企業体監理技術者
(概要)中平井線トンネルは、トンネル延長733m、内空断面約50m2の2車線道路トンネルである。本トンネルは、坑口から111.3mが低土被り条件下の造成盛土地盤中を掘削する区間である。造成盛土は、性状にバラツキが大きく、N値=10~20程度の礫主体の粘着力が小さい緩い未固結な地盤である。このような施工条件により、本トンネルは補助工法を用いて確実に切羽安定を図る必要があった。そこで、補助工法の盛土地盤内における改良効果を把握するため、トンネル施工前や掘削時にAGFや長尺鏡ボルトの注入に関する試験施工を行い、注入量や注入圧の最適化を図りながら施工を進めた。しかし、このような対応の中、抜け落ちや崩落が数回発生しており、これらの事象に対して発生メカニズムを分析し、補助工法の適用効果や経済性、安全性、工程等を考慮して対策を立案・決定し、後の掘削に反映させた。その結果、非常に切羽安定性の悪い未固結造成盛土中の掘削に対して、切羽の安定を確保し、本区間を無事に突破した。
キーワード:造成盛土、切羽安定対策、低土被り、端末管事前撤去型AGF工法(AGF-Tk工法)
P50-57
市街地における周辺環境に配慮したトンネルの施工-街路滝山桜谷線トンネル工事-
平方 宏朋/㈱安藤・間広島支店滝山トンネル作業所工事主任
(概要)滝山トンネルの坑口付近は第1種中高層住居専用地域であり、民家をはじめ小学校、JR山陰本線、墓地、テレビ塔や高圧線鉄塔などの支障物件が多く、工事による騒音、振動の影響が懸念されていた。このような理由から掘削方法は全線機械掘削とした。発進側の坑口付近においては特に民家が近接していたため、騒音対策として坑口には防音扉を設置し、仮設ヤード及び坑口付近は防音壁にて囲いを行った。さらに吹付プラントおよび送風機は防音ハウスで囲い、残土仮置用の防音ハウスを設け夜間に排出される残土の仮置きを行った。到達側の坑口部では、崖錐土砂層がトンネル天端付近に分布していたため、切羽安定対策の検討が必要であった。今回の報告では、騒音の低減対策についての取り組みとその効果及び切羽安定対策として実施した補助工法について報告するものである。
キーワード:機械掘削、騒音対策、防音壁、防音ハウス、騒音低減効果
p58-65
スコリア区間における大量湧水下でのトンネル掘削について -鹿児島3号 宮里トンネル新設工事-
辛島 義庸/三井住友建設㈱九州支店土木部工事主任
(概要)南九州西回り自動車道(総延長約140km)は,熊本県八代市から水俣市、鹿児島県出水市、薩摩川内市を経て鹿児島市に至る高規格幹線道路であり、並行する国道3号の交通混雑の緩和、災害時等における信頼性のあるネットワークとして機能するとともに、九州南西部地域の経済活性化等に大きく寄与する路線である.宮里トンネルは,薩摩川内市の南西部を貫く暫定2車線、延長1,241mの道路トンネルを構築するものである(図1,1).
本稿は,帯水層として形成されている川内溶結凝灰岩と全国的にも珍しいスコリア噴出物区間における事前の調査ボーリング結果による想定,施工時における大量湧水下での水抜きボーリング工,補助工法を実施したトンネル掘削について,施工結果を報告するものである.
キーワード:川内溶結凝灰岩,スコリア噴出物,大量湧水,水抜きボーリング工
P66-73
性状変化が激しい泥岩を前方探査にて事前に評価し掘削 -九州新幹線(西九州)俵坂トンネル(西)他工事-
北澤 剛/前田建設工業㈱九州支店新幹線俵坂トンネル作業所監理技術者
(概要)佐賀県嬉野市~長崎県東彼杵郡東彼杵町間に計画されている九州新幹線俵坂トンネルは,全長5,705m の山岳トンネルであり,そのうち西工区の掘削延長は3,060m である.また,西工区の代表的な掘削地質は性状変化が激しい古第三紀杵島層群泥岩層であり,起点側・終点側に分けて2区間出現した.起点側泥岩区間は最大土被り160m であり,そのうち破砕性泥岩区間では,200 ㎜を超過した大きな内空変位が発生した.また,終点側泥岩区間は最大土被りが260m であり,地山強度比が著しく低下するため,さらなる内空変位増大が危惧された.そこで,終点側泥岩区間では前方探査を実施する事により,性状変化が激しい泥岩を事前評価し,適切な支保パターン設定,内空変位対策工を行うことで,破砕性泥岩区間を突破した事例を発表する.
キーワード:前方探査,押出し性地山,早期閉合,インバートストラット
P74-81
ノンコア削孔による切羽前方探査技術の適用-大宮第14トンネル-
渡邉 淳/㈱大林組大宮第14トンネル工事事務所主任
(概要)鳥取豊岡宮津自動車道(延長120km)は、鳥取市から豊岡市を経て宮津市にいたる地域高規格道路である。この一部を構成する野田川大宮道路は、京都府丹後市大宮町から与謝郡与謝野町区間を貫く延長1964mの山岳トンネル工事である。
地形は標高300m程度の丘陵地帯であり、等高線が細かく出入りし小さな沢が多く発達している。本トンネルの主な地質は、白亜紀後期に形成された宮津花崗岩類である黒雲母花崗岩が分布している。トンネル路線は全体に風化が強く、近接する震源断層の影響もあり断層破砕帯が連続しており、断層沿いには多くの湧泉が認められている。
このような地形、地質でのトンネル掘削では、詳細な切羽前方の地山状況を把握することが重要となる。本トンネルではノンコア削孔による切羽先方探査技術を活かし、安全を確保した合理的な掘削を行なうべく施工に臨んだ。
キーワード:ノンコア削孔、断層破砕帯、湧水、補助工法
p82-89
土被り4mの府道直下を横断するトンネル施工について -京都縦貫自動車道瑞穂トンネル工事-
中谷 幸一/佐藤工業㈱瑞穂トンネル作業所所長
(概要)丹波綾部道路は、京都縦貫自動車道の一部区間を構成し、京都府中部および北部地域の活性化を図るとともに、物流の効率化さらには国道27号線の代替路の確保等を目的とした延長29.2kmの国土交通省が管轄する事業である。当工事は全長約2.9kmの瑞穂トンネルの内、水呑地区(南側)から大簾地区(北側)に向かう1.4kmのトンネル工事である。
キーワード 低土被り盛土の坑口,ミニパイプルーフ(トレヴィチューブ工法),覆工RC構造,工程短縮
P90-97
小土被り区間のトンネル施工と自然由来のふっ素を含む掘削ずりの対策-朝倉トンネル工事-
兼松 亮/飛島建設㈱土木事業統括部トンネルチーム主任
(概要)朝倉トンネルは、愛媛県今治市を通る今治道路の一区間として施工している延長429mのトンネル新設工事である。本トンネルでは、起点側坑口から約130mにわたり強風化花崗岩が分布する小土被り区間が続くため、地形、地質条件をより忠実に反映できる三次元FEM解析を用いてトンネル支保の安定化対策を検討した。検討の結果、本設インバートの早期断面閉合を実施するとともに、掘削時の地山挙動を把握するために、B計測を含む各種自動計測を実施した。その結果、計画通りトンネルの安定性を確保しながら掘削を完了することができた。また、本工事では工事着手前の追加調査により、ほぼ全線にわたり自然由来のふっ素が溶出する地山が分布することや、一部区間では自然由来の水銀が溶出することが明らかとなった。そのため、掘削ずりの処理方法を検討し、発生土量が多いふっ素溶出ずりについては不溶化して本線盛土に利用するとともに、発生量が少ない水銀溶出ずりは産廃処理場に処分することで、周辺環境への悪影響を回避できた。
キーワード 小土被り区間、三次元FEM解析、早期断面閉合、B計測、自然由来のふっ素、不溶化
P98-105
覆工コンクリート品質向上に関する取組みと表層品質の評価 -田老第6トンネル工事-
八巻 大介/西松建設㈱北日本支社田老トンネル出張所工事主任
(概要) 昨今,覆工コンクリートの品質向上対策は,呼び強度の増加や混和材の添加等による事例が主流となっているが,本工事では,いっそう丁寧な施工を実施するための「施工チェックシート」および,PDCAサイクルにより施工改善を実践する「目視評価法」を新たに取入れ,ソフト面での覆工コンクリートの品質向上対策を試行した.ハード面では,天端部打設手法としてマイスタークリート工法を,後養生にバルーン養生を採用し高品質化に取組んだ.また,これらの効果の検証としてコンクリート表面吸水試験法(以下,SWATと称す)を用いて,コンクリートの表面吸水速度から表層品質を定量的に評価した.
キーワード:覆工コンクリート,ひび割れ,施工チェックシート,目視評価法,バルーン養生,SWAT,表層品質,空洞
P106-111
軟弱な市街地地盤における地下水路トンネル施工について -都市基盤河川奈坪川改修工事(トンネル本体)-
光増 朝久/清水・中村・大幹・米弥建設共同企業体奈坪川トンネル作業所
(概要)奈坪川は宇都宮市を流れる都市型河川であり、溢水被害の解消を図る目的で都市基盤河川奈坪川改修工事が事業化されている。本工事は、その一環として地下水路トンネル約850mを施工するものである。写真1に地上部の状況を示す。当初ボーリングデータからは、山岳NATMによる安定した施工が見込まれていた。しかし、トンネル坑口より300m付近から切羽の固結度が小さくなり湧水が次第に増加した。そして切羽全面から出水し、流砂現象も発生した。都市部において周辺環境に影響を及ぼすことなくトンネル工事を施工するにあたり、地山状況に応じた補助工法を行ったので、これについて報告する。また、本工事のトンネル断面は小さく、覆工はウォータータイト構造であり、施工にあたり種々の創意工夫を行っているので合わせて報告する。
キーワード;都市型河川,山岳NATM,小断面,機械掘削,軌道方式,軟弱地盤,中尺先受け工,中尺鏡ボルト工,流砂,止水注入工,ウォータータイト覆工