202302

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第92回施工体験発表会(山岳)CD-ROM
主題/副題
「新技術・創意工夫により課題を解決した山岳トンネル新設・改修工事」-生産性・安全性向上、働き方改革-
所属
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
2023年(令和5年)10月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

◆ICTを活用した山岳トンネルの省力化・高品質化の両立
― 東海北陸自動車道 真木トンネル ―
清水建設(株) 北陸支店 土木部 真木トンネル工事主任 小笠原 健
(概要)施工工程の多くで技能者の技量に依存する山岳トンネル工事では,熟練技能者の離職に伴う生産性の低下や,重篤災害発生率の下げ止まりが問題となっており,現場の生産性と安全性の向上を高い次元で両立させることが喫緊の課題である.こうした課題の解決策として,筆者らが取り組んでいるのが,ICTを活用した機械施工の開発である.このシステムは,フィジカル空間の情報をもとに,サイバー空間で分析されたデータに基づき施工機械をフルオートあるいはセミオート稼働させ,熟練技能者の技量に依存してきた工程の機械化を実現するものである.本稿では,最適発破自動設計施工システムとロックボルト遠隔施工システムを活用した機械施工の結果を報告する.
キーワード 生産性向上,機械施工,機械制御,自動化,フルオートコンピュータジャンボ,ロックボルト

◆山岳トンネル工事における油圧ショベル無人化施工システムの開発と適用
― 北海道新幹線,磐石トンネル(北)他工事 ―
西松建設(株) 技術研究所 上席研究員 山本 悟
(概要)山岳トンネルの建設工事におけるトンネル切羽は地山の崩落や肌落ちなどの災害が発生する恐れがあり,作業員は粉じん,振動・騒音などに晒される過酷な環境下となる場合が多い.トンネル建設に従事する作業員の安全性の向上,作業環境の改善のために,バックホウやブレーカ等の油圧ショベルを遠隔操作する無人化施工システム「Tunnel RemOS-Excavator(トンネルリモス-エクスカベータ)」を開発し,ブレーカの遠隔操作を北海道新幹線,磐石トンネル(北)他工事に適用した.本稿では,当該システムの概要と実施工における適用状況について報告するものである.
キーワード 無人化施工,油圧ショベル,遠隔操作

◆自己充塡覆工構築システムの開発および現場適用による検証
― 国道418号 足瀬トンネル ―
佐藤工業(株) 技術センター 土木研究部 弘光 太郎
(概要)覆工施工のさらなる省力化,省人化および覆工の品質確保を目的として,令和3年度2災公共土木施設災害復旧工事(足瀬トンネル)の一部区間に自己充塡覆工構築システムを適用した.セントル下端からの自己充塡コンクリートの圧入により,締固め作業および上方への配管の切替え作業を行わずに良好な覆工を構築することができ,省力化や品質確保に加え作業環境の改善が可能であることを実証した.本稿は,自己充塡覆工構築システムの概要および足瀬トンネルへの適用について報告するものである.
キーワード 覆工,自己充塡コンクリート,省力化,充塡,圧入

◆モノレール橋脚直下10mのトンネル掘削
― 平成30年度赤嶺トンネル(北側)工事 ―
飛島建設(株)土木本部 新幹線立岩トンネル作業所 川村 柚稀
(概要)赤嶺トンネルはトンネル全線が小土被りのトンネルで,ルート上には自衛隊基地,沖縄都市モノレールおよび県道那覇空港線が存在する.特に北側工区はモノレール橋脚直下約10mの位置を掘削するため,モノレールの運行に重大な影響が及ばないようにすることが求められた.本稿では,モノレール橋脚の計測管理や変位監視における効率化の取り組みについて報告する.
キーワード トンネル掘削,モノレール橋脚,変位抑制,計測管理,自動計測

◆硬質地山と地すべり地における供用トンネルとの近接施工
― 松山自動車道 明神山トンネルⅡ期線 ―
(株)大林組 四国支店 浦山川橋耐震工事事務所 主任 平本 竜也
(概要)松山自動車道明神山トンネルⅡ期線は伊予ICから内子五十崎IC間に位置する全長2,545mの2車線トンネルである.本トンネルは中央構造線の影響を受け,変化に富んだ複雑な地質を有しており,かつ供用線と近接したⅡ期線施工という厳しい条件下であった.そのため,トンネル掘削が供用線に対して動的・静的影響を与える可能性があった.そこで,各種の計測を行い施工時の挙動を把握した.さらに,供用線を通行する第三者への安全確保の観点から,Ⅱ期線トンネルの施工方法の検討や,供用線およびⅡ期線の管理基準値の設定などを行った.
キーワード Ⅱ期線,近接施工,地すべり地,K値,段発発破

◆坑口部が市街地に近接するⅡ期線トンネルの施工
― 佐世保道路 天神山トンネル工事 ―
(株)安藤・間 九州支店 天神山トンネル作業所 工事主任 川原 健太
(概要)佐世保道路天神山トンネルは,909mの道路トンネルである.両坑口部は市街地に位置しており,坑口付近では民家直下の掘削となるため地表面沈下抑制対策や騒音・振動低減対策が求められた.特に,掘削到達側の西側坑口は地すべり地形を呈しており, 各種の動態観測や地表面沈下計測を実施しながらの慎重な施工が要求された.本稿では,坑口部が市街地に近接したⅡ期線トンネル施工における地表面沈下抑制対策,騒音・振動低減対策,各種の動態観測や計測管理結果,坑口部に適用した仮設備,Ⅰ期線への影響計測の結果などについて報告する.
キーワード Ⅱ期線トンネル,地すべり,地表面沈下,圧力式沈下計,掘削補助工法, 昇降設備

◆2本のプロテクターを駆使して地域交通を維持したままトンネル活線拡幅を施工
― 国道465号 蔵玉隧道拡幅工事 ―
飛島建設(株) 札幌支店 新幹線札樽トンネル作業所 工事担当技術者 西原 佳胤
(概要)国道465号蔵玉隧道拡幅工事は,掘削断面内に一般車両を通行させながら千葉県君津市蔵玉に位置する蔵玉隧道を2車線に拡幅する工事である.既存の蔵玉隧道は1953年に建設された延長145mの道路トンネルで,幅員が狭く一般車両のすれ違いが困難な上に3.5mの高さ制限も設けられていた一方で,当該路線が千葉県の緊急輸送道路一次路線に指定されている重要路線であるため,長年2車線化が求められていた.2車線化に際しては当隧道周辺に迂回路がないため,トンネル活線拡幅工事とする必要があった.そのため一般車両を防護するプロテクターの設置に伴う空間的制約,一般車両の通行への影響を最小限とするための時間的制約,終点側坑口付近に所在する住民の生活環境への配慮,および一般市民・作業従事者双方の安全などを考慮した施工方法,施工機械の選定が求められた.本稿では,上記の施工条件に起因した課題に対応するために選定した仮設備,施工機械,および施工方法によるトンネル活線拡幅工事の施工結果について報告する.
キーワード トンネル活線拡幅,プロテクター,交通災害リスク

◆複数の制約条件下での本坑・避難坑坑口部の施工実績
― 大野油坂道路荒島第2トンネル下山地区工事 ―
西松建設(株) 西日本支社 土木営業部 担当部長 髙橋 卓也
(概要)大野油坂道路最長のトンネルである荒島第2トンネル(L=4,988m)の下山地区は当初設計において,坑口部では大規模なルートパイルでの地すべり対策が計画されていた.豪雪地帯であるため,冬期からの施工開始は困難な可能性が高いことから,本格的な降雪前にトンネル本体着手することを検討した.その結果,工程的に有利となる斜め坑口(本坑・避難坑両方)を採用した.地形を踏まえた斜め坑口とすることにより,切土量・地すべり対策工の数量を低減することができ,本格的な降雪前にトンネル掘削を開始することができた.本坑トンネル掘削の進捗に伴い地表面沈下・内空変位ともに管理基準レベルを大幅に超過する箇所が確認されたため早期閉合を実施し,トンネル掘削を継続した.斜め坑口を採用した場合でも,少量の法面工が残る結果となったが,本坑と避難連絡坑をうまく活用することでトンネル掘削を止めることなく施工を行うことができた.
キーワード 地すべり対策,斜め坑口,早期閉合,工程

◆古洞近接区間や膨張性を示す泥岩地山でのトンネル施工について
― 一般県道佐世保世知原線道路改良工事 長崎板山トンネル ―
(株)奥村組 西日本支社 九州支店土木工事部 佐世保高架橋南工事所 工事主任 平川 晃司
(概要)一般県道佐世保世知原線道路改良工事(仮称)長崎板山トンネルは,一般県道佐世保世知原線の整備を目的として工事延長1,640mの内トンネル区間1,602mの道路トンネルを施工するものである.本トンネル工事には,旧炭鉱跡の「古洞」がトンネル構造へ影響を及ぼす区間が存在し対応を求められた.また,新第三紀の凝灰質泥岩層や膨張性を示す泥岩地山区間において切羽の崩落や天端の抜け落ちが発生し,切羽の安定化に向けた対策も必要とされた.ここでは,その対策や対策の実施過程で採用した切羽作業の安全管理について報告する.
キーワード 旧炭鉱,古洞充填,膨張性地山,早期閉合,切羽崩落検知システム,落石防護ガード

◆鉄塔と国道に近接し廃線隧道に接した山岳トンネルの設計・施工と新技術の導入
― 国道176号 名塩道路城山トンネル工事 ―
(株)鴻池組 城山トンネル工事事務所 所長 監理技術者 山田 浩幸
(概要)名塩道路城山トンネル工事は,都市部における延長L=311mの山岳トンネル工事である.北側に武庫川,南側にJR福知山線,計画トンネル上部に旧JR廃線隧道や関西電力鉄塔を有する急傾斜地に位置し,供用中の国道176号に近接した施工となった.本トンネルを取り巻く厳しい施工条件下での施工にあたり,課題の解決のために施工者の高度な技術と経験を取り入れることのできる技術提案交渉方式(技術協力・施工タイプECI方式)が採用された.トンネルの施工では,切羽前方探査(DRISS)により前方地山状況を把握し,計測工Bや鉄塔計測によりトンネルの挙動を確認しながら施工を進めた.また,BIM/CIMやDX技術による生産性向上を図り,新技術の導入を積極的に実施した.本報告では,厳しい施工条件のもと,数々の課題に対して実施した技術提案交渉方式の技術協力・施工タイプ(ECI方式)によるトンネルの設計と施工および現場で導入した新技術について報告する.
キーワード 山岳トンネル,ECI方式,近接施工,補助工法,新技術

◆地質境界部および低速度帯における山岳トンネルの施工
― 大野油坂道路 大谷トンネル箱ケ瀬工区工事 ―
青木あすなろ建設(株) 大阪土木本店 林谷橋下部工作業所 現場代理人 影林 義賢
(概要)大谷トンネル箱ケ瀬工区工事は,中部縦貫自動車道の大野油坂道路に計画されているトンネル延長2853mの内の1418mを掘削する工事で,掘削断面積120m2,内空断面積93m2の大断面トンネル工事である.掘削方式は発破方式で,地山等級がCM級,CH級の中硬岩が主体で弾性波速度は3.5km/sec~4.0km/secの区間が多く,地山は良好と判断された.しかし,トンネル地質境界部や塩基性片岩の低速度帯周辺では,亀裂の多い低強度の泥質岩が分布し,掘削後の応力開放に伴い,内空変位が収束しない状況が発生した.ここでは,変位抑制対策として実施した支保の増強や補助工法について述べる.また,地山損傷抑制や余掘り低減のため実施した発破掘削のICT施工,作業環境向上対策等についても述べる.
キーワード 地質境界部,増しロックボルト,インバート早期閉合,ICT施工 ,作業環境向上対策

◆小断面2車線道路トンネルにおける施工性および安全性に対する創意工夫について
― 奥瀞道路(3 期)2 号トンネル他工事 ―
(株)熊谷組 奥瀞2 号トンネル作業所 工事主任 山本 憲一
(概要)奥瀞2号トンネルは,掘削断面が約48m2であり,積算上は小断面トンネルに分類され,標準的な道路トンネルと比べて断面小さいことから,施工性や安全性の確保が課題となった.本稿では,本トンネル特有の課題を抽出しつつ,大型機械の導入による生産性向上や狭隘な空間での安全性の確保に向けた取り組みについて報告する.
キーワード 大型機械の作業性向上,小断面トンネルにおける仮設備計画,セントル形状決定のための試行錯誤

◆長大・小断面トンネルにおけるレール方式による断層破砕帯の施工
― 大沼トンネル避難坑峠下工区新設工事 ―
大成建設(株) 札幌支店 大沼トンネル共同企業体工事作業所 肥後 宏紀
(概要)本報は,大沼トンネル避難坑工事において実施したレール方式や生産性向上に関わる取り組み,ならびに多量の被圧湧水を有する断層破砕帯で実施した事前調査および種々の切羽安定対策についてまとめたものである.本トンネル周辺の基盤の地質は,広く熱水変質作用を受けており,粘土化や珪化を被った脆弱な地質であることが予想され,トンネルルート上で計5か所,断層破砕帯と交差することが予想されていた.工区内では,土被りが最大約300mあり地下水位も高いことから高水圧による切羽の不安定化が懸念されたため,通常の調査ボーリングに加えて,当社開発の湧水調査技術T-DrillPacker®による切羽前方の湧水圧の測定を行った.測定した湧水圧に対してバルクヘッドモデルを用いた切羽安定評価により,切羽の安定を確保しながら掘削を進めた.また,破砕帯の影響を受けた変位の大きい区間では,多重支保工など種々の切羽安定対策を講じることで,破砕帯を突破することができた.
キーワード 小断面トンネル,レール方式,多量湧水,T-DrillPacker®,多重支保工

◆ICTを活用した地下発電所掘削およびコンクリート施工についての報告
― インドネシア アサハン第3水力発電所 土建工事 ―
清水建設(株) 土木国際支店 土木部 アサハン第3水力発電建設所 工事係員 今里 光紀
(概要)アサハン第3水力発電所は,インドネシア共和国スマトラ島のトバ湖から流れ出るアサハン川の水を利用する流れ込み式の水力発電所1)であり,北スマトラ系統の電力供給の安定化を図るため,2023年現在,建設が進められている.土建工事の一環として当社が施工を行った地下発電所は,吹付けコンクリート・ロックボルト・PSアンカーを支保工とした,高さ39m,幅22m,延長107mの空洞であり,土かぶり約160mの深度に建設された2).掘削には,コンピュータジャンボを使用し,アーチ部PSアンカーの削孔には,上向きに削孔できるよう改良したベンチ掘削用油圧クローラドリルおよびロッドチェンジャーを使用することで,工程短縮と安全性向上を実現させた.コンクリート打設では,詳細な施工ステップ・打設順序を検討することで,品質を確保するとともに,別発注の電気機器工事への引渡しを期限内に完了することができた.さらに,積極的にICT技術を導入し,施工を行った.
キーワード 地下発電所,コンピュータジャンボ,二次コンクリート,BIM

◆小断面TBMによる長距離水路トンネルの施工
― 広島水道用水供給事業 二期トンネル整備工事(矢野~二河工区) ―
戸田建設(株) 広島支店 小林 一樹
(概要)本工事は,広島水道用水供給事業「二期トンネル整備工事」事業延長14.3kmのうち,矢野側(2区間;7,038m)と二河側(3区間;2,354m)の二方向への掘削をTBM工法(マシン外径φ2,700mm)により行い,仕上がり径2,200~2,600mmの導水トンネルを構築する工事である.掘削路線の周辺は標高400~500m程度の山々が連なり,広島花崗岩類と呼ばれる火成岩が基盤岩として広く分布している.発進立坑(内径φ11m,深さ25m)は,岩盤等級CH級の硬質地盤であることから,NATM工法(発破掘削)により構築した.TBM掘削は,3区間の施工は2019年12月に完了し,2023年8月現在,2区間を6,500mまで掘削を行っている.広島花崗岩類を主体とした掘削対象の岩盤は一軸圧縮強度170MPa以上の新鮮で非常に硬質な岩盤層が出現し,想定以上のカッタービットの摩耗やマシントラブルに見舞われた.本稿では,カッタービットのトラブル対策,2区間掘削時に出現した不良地山対策の実績について報告する.
キーワード TBM工法,硬岩掘削,不良地山対策

◆長距離放水路工事における新技術・創意工夫の採用による安全性、生産性の向上
― 日下川新規放水路吞口側トンネル ―
鹿島建設(株) 四国支店 日下川新規放水路トンネル(吞口側)工事事務所課長代理 森本 幸二
(概要)日下川は,仁淀川の河口より14.3kmの右岸に合流し,日高村の中央部を貫流する幹川延長11.7km,流域面積38km2の河川である.日下川沿いに形成された平野は,仁淀川から離れるほど地盤が低くなる低奥型地形を呈しており,日下川の洪水がはけにくく,浸水被害が頻発していた.これまでに派川日下川放水路(高知県,1961年完成)や日下川放水路(国,1982年完成:鹿島JV施工)を整備してきている.しかしながら,2014年8月の台風11号,12号により立て続けに甚大な浸水被害が発生したため,2015年度『床上浸水対策特別緊急事業(日下川)』が採択された.設計掘削断面積約50m2,掘削幅員7.7mの狭隘断面で離合も極めて困難なことが大きな特徴である.この課題を解
決すべく様々な新技術の採用により,安全性,生産性の向上を図ったので施工実績を報告する.
キーワード 山岳トンネル,生産性,効率化,発破,安全,ロックボルト,施工管理,運行管理,覆工コンクリート,インバートコンクリートスリップフォーム,坑内位置検知