社団法人トンネル技術協会設立趣意書
1975.7.24
我が国のトンネルは,主として鉄道道路等の交通運輸施設において大きな役割を果たしているところでありますが,殊に,国土の70%を占める山地部と近時人口集中化の傾向が続く都市部において,その使命は益々大きくなっております。また,交通運輸施設の他,上下水道,共同溝,等の公共施設においても,トンネル施設に依存するところが多いのであります。
過去10年間において,我が国では,約100㎞のトンネルが建設され,約1兆円の投資がなされておりますが,今後の10年間においては,その2倍以上の建設がなされる見込であります。
しかし,各種のトンネル掘さくの技術は,その本質的類似性についてその総合統一を行う必要があります。特に,地盤地質の的確な予測の難しさに伴う工事条件の多様性と複雑性が適切な技術の改良を妨げていたと考えられますが,トンネル技術の重要な課題となっているこの地質予知技術の開発のほか,設計の規格化,施工の機械化,施工速度の向上,熟練作業員の確保省力化,新工法の開発,或は契約方法の統一化等の対策を推進することが非常に必要となっております。このことは,また,諸外国においても同様な傾向を示しております。
日本トンネル協会は,これらの問題に対処するため,昭和49年4月,官民多数の関係者の協力参加を得て設立され,同年9月には国際トンネル協会の加盟国代表機関となってトンネルに関する内外の情報を収集し,諸問題の調査研究を進めるとともに,機関誌の刊行,講演会の開催等により,最近の新技術の普及広報を図り,その進歩発展に寄与するための事業活動を続けてまいりました。
しかしながら,最近の社会情勢においては,以上の事業に関連して特に,トンネルの安全管理と公害対策の推進を図ることが社会的要請でもあり,又,緊急の課題となっております。これに対し、
- トンネルの防災対策及び合理的な設計方法
- トンネル工事に伴う渇水対策
- トンネル工事に伴う公害対策と効率的工法
- トンネル工事の安全施工と環境保全対策の指針
等の項目については,関係官公庁等の委託業務を含めて研究を進める予定であります。すなわち,トンネル工事の高速施工化等の新技術の開発と同時に工事中の事故防止に関する安全施工対策及び騒音振動等の公害防止対策,並びにトンネル内の防災対策,中でも地下鉄を含む鉄道道路の長大トンネル内の火災事故対策としての設備構造等の改善対策は,多数の人命に係る問題として,社会的に急務の課題となっているものであります。
日本トンネル協会は,このような社会の要請に対処するため,ここに社団法人日本トンネル技術協会を設立し,これまでの事業を継承するとともに,更に,一層これらの公益的諸事業の積極的推進を図り,もって国土の保全と公共の福祉の増進に寄与しようとするものであります。