201902

区分
施工体験発表テキスト
図書分類
施工体験発表会
図書名/雑誌名
第84回施工体験発表会(山岳) CD-ROM
主題/副題
課題克服に取り組んだトンネル工事-新技術、創意工夫、周辺環境への配慮-
発行所
一般社団法人日本トンネル技術協会
発刊年月(表示用)
2019年(令和元年)6月
頒布価格 (団体・税込)
5000円
頒布価格 (個人・税込)
5000円
頒布価格 (一般・税込)
5000円
体 裁
CD-RプリントサイズA4
内容

目次:掲載頁/演題/発表者/所属

目 次

鋼製支保工切羽無人化建込み技術の開発 -宮崎 218 号平底トンネル新設工事-
発表者:前田建設工業(株) 九州支店平底トンネル作業所工事課長 亀田 剛志
(概要)切羽肌落ち災害は山岳トンネル特有の労働災害であり,統計上,鋼製支保工建込み作業中の被災事例がもっとも多いのが現状である.災害防止対策として,鏡吹付けコンクリートや鏡ボルトなどによる地山のゆるみ抑制や切羽監視責任者の配置や切羽押し出し計測による岩石落下の予測,マンゲージガードなどによる設備的防護対策を複合的に実施し,災害発生確率を可能な限り下げる努力をしているが,抜本的な対策とは言い難いのが現状である.平成 28 年 12 月に厚生労働省より通達された「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」(平成 30 年 1 月改正)においては,機械化による事故防止対策が求められており,そもそも切羽に作業員が立入ることがなければ被災することはない.そこで我々は,切羽に作業員が立ち入ることなく,山岳トンネル用鋼製支保工を設置可能な鋼製支保工切羽無人化建込み技術を開発した.
(キーワード)山岳トンネル,切羽肌落ち災害防止,鋼製支保工,クイックジョイント,溶接金網,ガイドプレート,無人化建込み技術

災害復旧事業におけるトンネルの早期貫通に向けた取り組み
-熊本 57 号災害復旧 二重峠トンネル(阿蘇工区)工事-
発表者: (株)安藤・間 九州支店二重峠トンネル作業所工事主任 谷口 翔
(概要)二重峠トンネル工事は,平成 28 年熊本地震によって寸断された国道 57 号の災害復旧事業として,北側復旧ルートの二重峠トンネル(仮称)を新設するものである.トンネル全長が 3,659mの本坑と 3,652mの避難坑のうち,阿蘇工区ではそれぞれ約 1,820mを NATM により施工する.平成 28 年熊本地震による大規模な斜面崩壊によって寸断された国道 57 号の代替ルートとして,北側復旧ルートはその早期完成が強く望まれており,本トンネルも,一日も早い復旧への対応が求められた.トンネルの早期貫通に向けた工夫として,本トンネルでは,ECI 方式の採用,複数切羽での本坑掘削,薄肉化支保パターンの採用などの取り組みを実施した.本稿では実施した対応について報告する.
(キーワード)急速施工,ECI 方式,薄肉化支保パターン,多量湧水,大規模空洞

既設県道直下における小土かぶりトンネルの施工と掘削工程短縮について
-熊本 57 号災害復旧 二重峠トンネル(大津工区)工事-
発表者:清水建設(株) 九州支店土木部二重峠トンネル(大津工区)作業所 郡司 恭志
(概要)二重峠トンネルは,延長約 3.7km の避難坑を有する長大トンネルであり,本坑の掘削断面積は約 106m2の大断面トンネルである.災害復旧事業として北側復旧ルートの早期完成を目指す中で,このトンネルの工期短縮が課題であったため,設計段階から施工者独自のノウハウを取り入れる発注・契約方式(技術提案・交渉方式(技術協力・施工(ECI)タイプ))が採用された.早期開通に向けた取り組みとして,①坑口部既設県道直下の小土かぶり区間などでの補助工法の設定②支保構造の合理化③施工機械の高能力化と予備機の配置④本坑2箇所でのトンネル掘削⑤3班2交替制による掘削稼働日の確保⑥工程短縮を考慮した仮設計画などを ECI 協議において提案し,施工,運営を進めた.本稿では,掘削工程短縮のための提案および施工実績について報告する.(概要)寺山トンネル起点側坑口部は1D程度(D:14m)の小土かぶりが180mも続き,地表面は一部,沢地形や偏圧地形を呈していた.地質的にも砂岩の玉石(人頭大)を含む泥岩主体の混在岩(メランジェ)であり,スレーキング性が高く破砕質で脆弱な状況であり,当初より補助工法が計画されていた.施工時には,切羽前方探査による地質予測を行い,多段式小口径長尺鋼管フォアパイリング,長尺鏡ボルト,吹付けインバートによる早期閉合(5mサイクル)を採用した.探査範囲は終点側では通常の30m×3本の削孔を実施したが,起点側では,補助工法施工時の穿孔データ(12m×3本)を用いて実施した.また,三次元ソリッド解析による三次元的な予測を行うことにより,予測精度の向上を図った.さらに,大きな変位を生じたDⅠパターン箇所では変位量が規格値を超えたため,変位の収束を待ってより剛性の高いDⅢパターン(坑口パターン)で縫返しを実施した.
(キーワード)山岳トンネル,切羽前方探査,補助工法,計測管理,縫返し

未固結地山を小土かぶり・大断面で掘削 -読売ランド線トンネル-
発表者:大成建設(株) 南山造成作業所主任 川野 雄毅
(概要)読売ランド線トンネル築造工事は,南山東部土地区画整理事業において大規模な造成地のなか,都道の付け替え道路として延長 253mのトンネルを施工するものである.掘削対象土質は,N 値 10~40 程度の稲城砂層を主体とする未固結地山であり,最小土かぶり 19mであったため掘進に伴い大きな沈下が生じることが懸念された.結果として,TD=18m付近で 103mm の天端沈下が生じ,対策工ならびに的確な対応が求められた.本稿は,施工する上で生じた課題と実施した対策工について報告するものである.
(キーワード)未固結地山(稲城砂層),小土かぶり,大断面,A 計測

300mを超える高土かぶり下における蛇紋岩地山の変位抑制対策
-原子力災害制圧道路整備工事(交付金)(仮称)大島トンネル犬見工区-
発表者:飛島建設(株) 新大島トンネル作業所監理技術者 佐々木 和人
(概要)新大島トンネル犬見工区は,福井県大飯郡おおい町大島半島内の犬見~大島間に位置し,トンネル延長2,280mのうち犬見側の1,891mを施工するものである.本トンネルは,土かぶり300mを超える条件下で,全線に蛇紋岩化したかんらん岩が分布する中での施工となった.掘削時は不安定化しやすい切羽が続き,二十数回に及ぶ10m3から100m3規模の切羽崩落や50mm/日を超える初期変位が発生したことから,全体の約8割の区間で補助工法を採用しながら施工を進めた.本稿では,本トンネルの施工方法,本工事で確認した蛇紋岩地山の特徴,切羽崩落や初期変位増大への対応策,および覆工コンクリート脱枠時のひび割れ抑制対策について報告する.
(キーワード)蛇紋岩,高土かぶり,覆工

三次元解析を用いた坑口部の情報化施工 -新東名高速道路 湯船原トンネル工事-
発表者:西松建設(株) 関東土木支社湯船原工事事務所工事係 小牟禮 宏樹
(概要)新東名高速道路湯船原トンネル工事は,静岡県駿東郡小山町から御殿場市の区間における工事であり,上下線複線トンネルそれぞれ約1,600mを施工する.本トンネル工事では,施工事例の少ないスコリアと称する火山噴出物が堆積した未固結な特殊地層を対象とした.トンネルの坑口部(DⅢ区間)の掘削にあたり,事前に三次元FEM解析を実施し,事前予測をした上で,実施工での変位状況を確認しながら情報化施工を行った.
(キーワード)スコリア,三次元解析,情報化施工

小土かぶり強風化花崗岩地山における配水池近傍での近接施工 -北陸新幹線 武生トンネル-
発表者:鉄建建設(株) 大阪支店武生トンネル作業所監理技術者 有田 実生
(概要)北陸新幹線,武生トンネル工事において,福井県越前市が管理する西谷配水池の近傍および市道直下を武生トンネルが通過する.配水池近傍ではトンネルの土かぶりが小さいうえ,地山は強風化した花崗岩地山である.そのため,配水池近傍での近接施工においては,トンネル掘削の影響により地表面や配水池が沈下し,構造物の安定性や機能の低下が懸念された.そこで,小土かぶり強風化花崗岩地山における配水池近傍でのトンネル掘削に対し,事前の数値解析による影響予測,予測結果に基づく対策工の選定を行い,地表面や配水池に対し各種の計測工を実施した.施工時における対策工は事前解析結果に基づき計測結果に応じて段階的なランクアップを実施した.その結果,配水池および地表面の変位は,切羽が配水池に近接するに従い小さくなる傾向にあり,最終的にはレベルⅢ未満で収束し,配水池および市道の機能や安全性は保持されたと考えられる.

小土かぶり市道直下における近接施工について -九州新幹線西九州ルート 第3岩松トンネル-
発表者:(株)熊谷組 九州支店岩松トンネル作業所副所長 新宮 信也
(概要)九州新幹線西九州ルートの第3岩松トンネルは,住宅地および市道直下を最小土かぶり3mで通過する山岳トンネルである.近接構造物への影響を最小限に抑えて小土かぶり区間を通過するため,地質調査に基づく地盤条件の把握と数値解析によるシミュレーションを行い,対策工の検討を行った.対策工として無拡幅型長尺フォアパイリング(以下,AGF)と道路開削による埋設物(上下水道管)の監視および吊り防護を実施し,市道直下を掘進する際は,切羽位置に合わせて道路占用帯を切り替えた.結果,近接構造物に設定した沈下量,変形角の許容値を超過することなく,無事,小土かぶり区間を通過した.
(キーワード)小土かぶり,地質調査,数値解析,無拡幅型AGF,吊り防護,道路占用,沈下量,変形角

幹線国道を極小土かぶりで斜交する山岳トンネルの施工 -九州新幹線(西九州)、諫早トンネル他工事-
発表者:戸田建設(株) 九州新幹線(西九州)諫早トンネル作業所長 堅田 篤史
(概要)本トンネルは,九州新幹線(西九州ルート)において諫早から長崎に至る区間に計画され,在来線の諫早駅より長崎方に約 500m の市街地に位置する計画延長 230m のトンネルである.
路線地形は,なだらかな丘陵地に挟まれた標高 12~30m程度の谷間にある市街化地域で,地質は古第三紀の砂岩頁岩互層を基盤岩とし,その上層に新第三紀更新世の風化凝灰角礫岩(円礫径 30~150 ㎝)が分布し,これらを完新世の未固結層が覆っている.このような条件下において,幹線道路である国道 207 号線下を土かぶり 3.5m,市道宇都御舘山線下を土かぶり 3.9mでトンネル掘削を施工した.国道とトンネルは斜交する線形であり,この区間には国道の沈下防止対策としてパイプルーフ(φ800,L=60m×15 本)が当初から計画されていた.本報は,硬質な円礫を含む地質条件下でのパイプルーフの施工と施工結果,および国道下(パイプルーフ区間)のトンネル掘削実績について報告する.
(キーワード)小土かぶり,近接施工,パイプルーフ,裏込めラップ工法,早期閉合

大変位を伴う泥質片岩・蛇紋岩での山岳トンネルの施工 -国道 197 号松柏トンネル建設工事-
発表者:(株)大林組四国支店松柏トンネル工事事務所工事長 古家 義信
(概要)国道 197 号松柏トンネルは愛媛県八幡浜市に位置する延長 1,090m の二車線道路トンネルである.地質は三波川変成岩類に属する泥質片岩が主体で,一部に塩基性片岩および蛇紋岩が狭在する.泥質片岩および蛇紋岩は脆弱で大きな土圧が作用し,最大で片側 770mm の水平変位が発生するとともに,吹付コンクリートのひび割れやロックボルトの破断,鋼製支保工の座屈といった一次支保の著しい損傷や,インバートコンクリートのひび割れおよび隆起が発生した.本稿では,計測管理に基づいて行ったトンネル掘削時の大変位対策や,供用中の変状発生リスクに備えて実施した対策について述べる.
(キーワード)大変位,インバート隆起,泥質片岩,蛇紋岩,供用中の変状発生リスク

小土かぶりかつ既往地すべり箇所に隣接した箇所のトンネル施工 -静間仁摩道路 五十猛トンネル-
発表者:大成建設(株) 中国支店静間仁摩道路五十猛トンネル工事作業所主任 岡 幸宏
(概要)静間仁摩(しずまにま)道路は,整備中の山陰道のうち,島根県大田市内に位置する延長7.9kmの区間である.五十猛(いそたけ)トンネルは,延長L=1,082mの2車線道路トンネルである.本トンネルは,最大土かぶりでも約40m(3.3D)となっており,全体的に土かぶりの小さなトンネルである.終点側坑口から約300m地点にある「中間部」と呼ばれる区間は,軟らかい粘性土を主体とする崖錐堆積物に覆われた(層厚2~3m)土かぶり3mが確保されない区間である.加えて,付近の法面に既往地すべり箇所が確認されており,当初設計段階から同区間でのトンネル掘削に伴う新たな地すべりの発生,およびトンネル天端部への軟弱箇所出現による切羽の不安定化が懸念されていた.本報告では,施工条件・工程を吟味し計画した対策とその結果について報告する.
(キーワード)小土かぶり,地すべり,地盤改良,押え盛土,AGF-φ工法,地中変位測定,地表面沈下計測

避難坑を有する長大トンネルの工程促進対策 -中部横断自動車道 森山トンネル工事-
発表者:(株)奥村組 東日本支社東電柏崎 FV 事務所工事主任 中西 正樹
(概要)中部横断道森山トンネルは,坑口部の斜面崩壊による先行工事の遅れや斜面補強工に対する設計施工期間の発生,設計段階で想定されていなかった重金属含有土の発生に伴う仮置きヤードの確保期間の発生など,着手時期が大幅に遅れる中で早期供用を図る必要があった.ここでは,本工事が直面したこれら課題に応じた工程促進策を効果的に実施することで,目標期日内に引き渡しを行うことができたので,その概要について報告する.
(キーワード)山岳トンネル,工程促進,CIM,中部横断自動車道

供用中の高速道路における山岳トンネルのインバート設置工事について
-北陸自動車道 正善寺トンネル補強工事-
発表者:鉄建建設(株) 関越支店正善寺 TN 作業所工事係(現:東鷲宮駅作業所) 田中 翔太郎
(概要)東日本高速道(株)では,老朽化した高速道路のリニューアルプロジェクトが進められている.正善寺トンネル補強工事は,トンネル建設時にインバートが設置されておらず,路面隆起が発生している区間に,片側交通規制で一般車両を通行させながらインバートを設置する工事であり,新潟支社管内で初めて行われた大規模修繕工事である.2車線の高速道路のうち,片側を交通規制して行う工事であるため,規制期間および工程の厳守,一般交通および作業員の安全確保が求められた.本報告では,施工実績及び施工中の課題と対応策を発表する.
(キーワード)トンネル,インバート,高速道路,路面隆起,大規模修繕,リニューアル